恋愛と経験則 ページ9
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「まーたここにいたの猫被りちゃん」
「その呼び方やめて」
「じゃあなんて呼んだらいいんですか」
「A」
「はいはい」
あの日からお昼休みの終盤は、人気のない校舎隅でクロに愚痴を聞いてもらうことが日課になっていた。
よっこらせ、と私の隣にしゃがんで膝に置いた腕を伸ばすクロ。
「今日はどうしたんだよ」
一人でぶつぶつ孤爪が言っていたらしい呪文を唱えるよりも、誰かに話して相槌を打ってもらった方が心なしかすっきりした。
「別に、誰が誰を好きになろうがいいと思わない！？」
この男は何を好き好んで私の愚痴なんか聞いているのだろうか。
「友達の好きな人を好きになっちゃいけないなんてルール、一体どこの誰が決められたわけ！？」
今日はクラスがそんな話題で持ちきりだった。
「…好きになったら、仕方ないじゃない」
どうしようもない感情だって、たくさんある。
「なにそれ。経験則？」
いつもは適当に相槌を打っているクロが、私の独り言を遮るように言葉を発した。
「そういうのじゃ、ない」
私は膝を抱える腕に力を込める。
「なーんか。恋愛話ばっかりだな〜そういうお年頃ですか」
「そういう年頃なんです」
「お前は、どうなんだよ」
からかい半分でそう問いかけるクロと、ばっちりと目が合う。
「私は、そういうの、ない」
そんなくだらないことで、周りの人たちを失いたくない。
恋愛なんて、必要ない。
クロが「へえ」と小さく返事をし、徐に立ち上がった。
「お前みたいのだったら、男ホイホイ寄ってくるんじゃねえの」
立ち上がったクロを見上げると、彼は私を見ない。
「そういうの、全部断ってる」
「さらっと自慢ぶっこむのやめてもらえませんか」
「…」
「勿体ねえ」
私も立ち上がって皺を伸ばすようにスカートを軽く叩く。
「クロは、そういうのないの」
「ねえな」
きっぱり即答した彼の横顔を見上げる。
背だって高いし、顔だってそこそこいい。
まぁ私の可愛さとは比べものにならないけど。
それに女慣れしているような、扱いがわかっているような。でも人によって変えられないその態度。好きな人は好きなんじゃないだろうか。
そんな彼が、こうして私に構っているのが不思議で仕方ない。
「クロって、暇なの？」
「ばーか、俺はバレーで忙しいんだわ」
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クロいいよね - 完結おめでとうございます とっても面白かったです！！ (2022年11月21日 22時) (
レス) @page50 id: 18092cdeea (このIDを非表示/違反報告)
ちあ。(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます！毎日更新楽しみにしていました。私自身、自分は流されないように頑なになりすぎていたんだな、と作品を読みながら思いました。周りに合わせることも流されないことも、両方器用にできるようになりたいって思いました！ (2019年10月14日 1時) (レス) id: 2013350887 (このIDを非表示/違反報告)
momx(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても面白かったです。 (2019年10月13日 17時) (レス) id: 2de1bab8eb (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - 完結おめでとうございます！素敵だなと思う作品は小鈴さんの作品がほとんどで…。とても楽しまさせて頂きました。 (2019年10月13日 11時) (レス) id: 5f1f2e19c0 (このIDを非表示/違反報告)
usagicyanda(プロフ) - 完結おめでとうございます！丁度一年ほど前に私もこの主人公と全く同じ１つ上の人気者の先輩と付き合っていました、ほんとに全く同じ状況で涙がこぼれました..その先輩は晒すだけ晒して守ってくれませんでしたが... けど主人公ちゃんとクロが幸せになれてよかったです！ (2019年10月13日 3時) (レス) id: cef44ace1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年9月29日 17時
