ネコ騙し合い愛【黒尾鉄朗】

カミングアウトと不機嫌 ページ37

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「ちゃんと言えよ。俺と付き合ってるって」





言わずもがな、私はモテる。


並み以上には、告白をされていると思う。


その辺の場数を踏んでいる自覚はある。


でもその大半は、私のことを全然知らない人ばかり。


断る理由には十分すぎるくらいに、彼らは何も知らないのだ。







「断ってるんだから、別にいいじゃない」






いまだに猫を被り続けている私が、クロと付き合っていることを公言した日には、どういう目で見られるか。考えただけで怖い。


だってこんなに可愛い私が、今まで告白されても断る以外の選択をしなかった私が、誰かと付き合ってるなんて知れた日には。


しかもその相手がクロなんて知れた日には。


コイツ、意外とモテそうだから。


そう思いながらクロを見ると、‛なんだよ？’と目を細める。







「バレるのも、時間の問題だろ」






ちなみに、私に振られたごく一部の男子生徒からは陰で【冷酷女】呼ばわりされる私。


もっと他に思うところがあるだろう。


例えば、好きな人がいる、とか。


そんな非難されている私だけど、そんな少数派よりも多数の目の方が断然怖いと思ってしまうのは、自然なことではないのだろうか。


バレてから咎め問い詰められるよりも、自分から公言してしまった方が賢明なのかもしれない。


噂は独り歩きするって言うし。そうなってからじゃ、遅い気がする。







「そうかな」
「そうだろ」






私の言葉にすぐに切り返したクロは、見るからに。







「クロ、怒ってる…？」






ムッとした表情をしている。


仮にも怒っているのだとしたら、繋がない手にも合点がいく。






「怒る？なんで」





私が立ち止まると、クロが振り返る。







「怒ってるじゃん」
「怒ってねえって」






さっきまでの優しいクロじゃなくて、少し、怖い。







「私がクロと付き合ってること内緒にしてるから？だから怒ってるの？」

「だから怒ってねえって」






(怒ってるじゃん)


私が押し黙ると、クロが盛大なため息を吐いた。


ため息つきたいのは、こっちだっつうの。







「…あー。あのよ」





申し訳程度に視線を逸らしたクロが、静かに口を開く。







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