友達と感情 ページ29
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「A、元気?」
マミのお手洗いに付き添っていると、マミが手を洗いながら鏡越しに私を見た。
「え?元気だけど?」
「本当?」
うん、と頷くとマミがキュッと音を立てて水道の蛇口を捻って水を止めた。
「なんか、最近黒尾先輩と話していないんじゃない?」
マミが、私に顔を向ける。
「え、な、なんで…?」
久しぶりに聞いたその名前に、頬が引き攣る。
「だーって、なんかA、元気なーい!」
洗った手の水を切って、頭の上に乗せたハンカチで手の残りの水を拭きとるマミが少し声を張った。
「それに、黒尾先輩もなんか元気ないしぃ」
軽く口を尖らせたマミに、私は目を細めた。
なにが言いたいんだろうか。
まだ上手く、いっているのだろうか。
私が身を引くことによって、マミが傷つかないのなら、それでいいんだ。
「べっつに。黒尾先輩が元気ないのはいいけど」
マミが腰の後ろで手を組んで、私の顔を下から覗く。
「Aが元気ないのは、やだな」
その言葉に、どきりと心臓が跳ねた。
「なに、その顔」
「あ、いや。私は元気だよ?」
今の私は、上手く笑えているのだろうか。
口に緩いカーブを描いて首を傾げると、マミが私の顔に手を伸ばした。
「
どいつもこいつも、私の顔を何だと思っているんだ。
マミが私の顔を弄ぶかのように両頬を左右に引っ張る。
顔が、伸びそう。
すると、ぺちんとマミが私の頬を軽く叩いては、両手で包んで自分の方へと顔を向かせる。
「アンタが元気ないこと、私がわからないと思ったの?」
マミが、私の目を真っ直ぐ見る。
私はそんな彼女を、瞬きをするのも忘れて見つめ返す。
こんなマミ、初めて見る。
「マ、マミ…?」
私の頬を包むマミの手に触れる。
「友達なんだから、隠し事なしでしょ!」
息が詰まるような感覚。
マミのその真剣すぎる表情が、苦しくて。
【友達】っていう、たった二文字の言葉に、顔が強張る。
鼻がツンとして、喉に何か突っかかって、口内が乾いて。
そして、息が苦しい。
「アンナとかイノっちにならともかく、私には正直でいてよ。…元気のないA、やだよ」
「マミ…」
振り絞った声で、今目の前で泣きそうになっている彼女の名前を呼ぶので精一杯だった。
なんで、マミが泣くんだ…。
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クロいいよね - 完結おめでとうございます とっても面白かったです!! (2022年11月21日 22時) (レス) @page50 id: 18092cdeea (このIDを非表示/違反報告)
ちあ。(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます!毎日更新楽しみにしていました。私自身、自分は流されないように頑なになりすぎていたんだな、と作品を読みながら思いました。周りに合わせることも流されないことも、両方器用にできるようになりたいって思いました! (2019年10月14日 1時) (レス) id: 2013350887 (このIDを非表示/違反報告)
momx(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです。 (2019年10月13日 17時) (レス) id: 2de1bab8eb (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵だなと思う作品は小鈴さんの作品がほとんどで…。とても楽しまさせて頂きました。 (2019年10月13日 11時) (レス) id: 5f1f2e19c0 (このIDを非表示/違反報告)
usagicyanda(プロフ) - 完結おめでとうございます!丁度一年ほど前に私もこの主人公と全く同じ1つ上の人気者の先輩と付き合っていました、ほんとに全く同じ状況で涙がこぼれました..その先輩は晒すだけ晒して守ってくれませんでしたが... けど主人公ちゃんとクロが幸せになれてよかったです! (2019年10月13日 3時) (レス) id: cef44ace1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月29日 17時