虚偽と期待 ページ28
.
「おまっ、研磨！泣かせたのかぁ！」
「ちょっ、違うから！」
私の顔を見ては、孤爪に掴みかかろうとする山本を慌てて制する。
「山本、落ち着いて！」
「えっ…？こ、この間もそうだったけど、Aさん、や、山本…って。いつも‛山本くん’なのに…」
私の叫んだ声に、山本の目が点になる。
「研磨」
山本が孤爪の肩に手を置いて「俺は騙されていたのか」とあからさまに肩を落とした。
騙されていた。
そう、なるよね。
相手からしたら、騙されていたと思われても当然だ。
こうやって嘘が剥がれた時に、私は一体どうしようと思っていたのだろう。
「ごめん」
頭を下げることしか、できない。
「だがしかーし！謝るくらいなら…」
「マ、マネージャーやってください」といつもの調子で早口で言う山本に、私は思わず笑ってしまう。
私の周りの人全部、山本みたいな人だったら気兼ねなくて楽なのにな。
「俺は、Aがマネージャーやるの、ちょっと反対」
「はぁ？なんでだよ研磨！お前この間黒尾さんが聞いたときに‛別にどっちでもいい’って言ったろうが！」
‛黒尾’という名前に、私の反応を見た山本がバツの悪そうな顔をした。
山本は私とクロが揉めたあの現場に居合わせたんだ。気を遣わせて、本当に申し訳ないと思う。
「だって、虎とAが揃ったら、うるさそうだし」
孤爪が顔を歪めて私を見る。
こういう時の孤爪、本当に表情に出るよな。
「い、言われなくてもやらないし！」
ふん、とそっぽを向くと、山本が泣きじゃくるような声を上げる。
「お、俺はAさんなら、梟谷とか烏野のマネにぜってー勝てると思うんだけど、よ…」
言わんとしていることはわかるけど、そこでマウントを取らなくてもバレーの実力で勝負しろよ、と思わず突っ込みたくなる。
「そろそろ戻らないと、クロに怒られる」
「そうだった、やべえやべえ！」
じゃあね、A。
そう言って孤爪は教室のドアに手を掛ける。
「クロと、ちゃんと仲直りした方がいいよ」
孤爪には…本当に参っちゃうなぁ。
「研磨は早く課題提出した方がいいぞ。あの先生期限に厳しいからよ」
「えぇ…」
そんな二人の会話は、もう、教室の外。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロいいよね - 完結おめでとうございます とっても面白かったです！！ (2022年11月21日 22時) (
レス) @page50 id: 18092cdeea (このIDを非表示/違反報告)
ちあ。(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます！毎日更新楽しみにしていました。私自身、自分は流されないように頑なになりすぎていたんだな、と作品を読みながら思いました。周りに合わせることも流されないことも、両方器用にできるようになりたいって思いました！ (2019年10月14日 1時) (レス) id: 2013350887 (このIDを非表示/違反報告)
momx(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても面白かったです。 (2019年10月13日 17時) (レス) id: 2de1bab8eb (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - 完結おめでとうございます！素敵だなと思う作品は小鈴さんの作品がほとんどで…。とても楽しまさせて頂きました。 (2019年10月13日 11時) (レス) id: 5f1f2e19c0 (このIDを非表示/違反報告)
usagicyanda(プロフ) - 完結おめでとうございます！丁度一年ほど前に私もこの主人公と全く同じ１つ上の人気者の先輩と付き合っていました、ほんとに全く同じ状況で涙がこぼれました..その先輩は晒すだけ晒して守ってくれませんでしたが... けど主人公ちゃんとクロが幸せになれてよかったです！ (2019年10月13日 3時) (レス) id: cef44ace1d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小鈴
| 作成日時：2019年9月29日 17時
