検索窓
今日:77 hit、昨日:240 hit、合計:626,854 hit

待ち伏せと傘 ページ18

.





次の日。
私は傘を握りしめて緊張した様子のマミと、朝練終わりのクロを待ち伏せていた。


案の定孤爪とともに現れたクロに、マミがガチガチになった。






「おはよーさん、猫ちゃん」





クロが私を見つけるなりそう言うと、「猫?」とマミが首を傾げた。


「音駒のネコだよ!」と取ってつけたように誤魔化すと、本命のクロを目の前にしてそれどころじゃないマミは「そう」と私の言葉なんか身に入っていない様子で空返事をした。


普段のマミじゃないみたい。私がよく知っている、恋する女の子だ。





「マミ」





私は隣で傘を握りしめる彼女の背中を軽く押す。


息を呑んだマミが顔を上げて、私に促されるがままクロの前へと行く。






「こ、これ」





マミが差し出した傘を、クロが「おー、そういや貸したな」と言って受け取った。







「あの、ありがとうございました」






マミが顔を真っ赤にさせてクロを見上げる。


あぁ、可愛いな。女の子だ。





「別によかったのに。安もんだし」





そう言ったクロがビニール傘の柄を指に引っ掛けて弄んではぶら下げる。






「私、黒尾先輩のお陰で雨にぬれずにすんで」
「そらよかった」





「それで、」と続けるマミの言葉をクロが待っている。


そういう紳士的な態度、できるんじゃない。


クロの後ろでは、ゲーム機の画面と顔を近すぎるほどの距離に突き合わせた孤爪が、より一層激しくボタンを連打し始めていた。ラスボスにでも差し掛かったのだろうか。


私は二人の邪魔をしないように、と孤爪の後ろに回り込んでリュックを軽く引いた。


それどころではないくらいにゲームに集中している孤爪は、私にされるがまま大人しく後ろに下がった。


一歩、クロとの距離ができた。






「よ、よかったら。何かお礼させてください…!」






赤面したマミが、潤んだ瞳でクロを見上げる。


私は孤爪のリュックを掴んだまま、クロの背中を見る。







「礼って言われても…ねえ」






背中越しでもわかるくらいに困った様子のクロが、ガシガシと頭を掻いた。







「んー、どうすっかな」







そう小さく言ったクロが、チラリと私を振り返っては閃いたように笑った。


は…?なに…?






.

猫と安堵→←悪夢と再現



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (971 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1240人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 黒尾鉄朗 , 音駒   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

クロいいよね - 完結おめでとうございます とっても面白かったです!! (2022年11月21日 22時) (レス) @page50 id: 18092cdeea (このIDを非表示/違反報告)
ちあ。(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます!毎日更新楽しみにしていました。私自身、自分は流されないように頑なになりすぎていたんだな、と作品を読みながら思いました。周りに合わせることも流されないことも、両方器用にできるようになりたいって思いました! (2019年10月14日 1時) (レス) id: 2013350887 (このIDを非表示/違反報告)
momx(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです。 (2019年10月13日 17時) (レス) id: 2de1bab8eb (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵だなと思う作品は小鈴さんの作品がほとんどで…。とても楽しまさせて頂きました。 (2019年10月13日 11時) (レス) id: 5f1f2e19c0 (このIDを非表示/違反報告)
usagicyanda(プロフ) - 完結おめでとうございます!丁度一年ほど前に私もこの主人公と全く同じ1つ上の人気者の先輩と付き合っていました、ほんとに全く同じ状況で涙がこぼれました..その先輩は晒すだけ晒して守ってくれませんでしたが... けど主人公ちゃんとクロが幸せになれてよかったです! (2019年10月13日 3時) (レス) id: cef44ace1d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月29日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。