待ち伏せと傘 ページ18
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次の日。
私は傘を握りしめて緊張した様子のマミと、朝練終わりのクロを待ち伏せていた。
案の定孤爪とともに現れたクロに、マミがガチガチになった。
「おはよーさん、猫ちゃん」
クロが私を見つけるなりそう言うと、「猫?」とマミが首を傾げた。
「音駒のネコだよ!」と取ってつけたように誤魔化すと、本命のクロを目の前にしてそれどころじゃないマミは「そう」と私の言葉なんか身に入っていない様子で空返事をした。
普段のマミじゃないみたい。私がよく知っている、恋する女の子だ。
「マミ」
私は隣で傘を握りしめる彼女の背中を軽く押す。
息を呑んだマミが顔を上げて、私に促されるがままクロの前へと行く。
「こ、これ」
マミが差し出した傘を、クロが「おー、そういや貸したな」と言って受け取った。
「あの、ありがとうございました」
マミが顔を真っ赤にさせてクロを見上げる。
あぁ、可愛いな。女の子だ。
「別によかったのに。安もんだし」
そう言ったクロがビニール傘の柄を指に引っ掛けて弄んではぶら下げる。
「私、黒尾先輩のお陰で雨にぬれずにすんで」
「そらよかった」
「それで、」と続けるマミの言葉をクロが待っている。
そういう紳士的な態度、できるんじゃない。
クロの後ろでは、ゲーム機の画面と顔を近すぎるほどの距離に突き合わせた孤爪が、より一層激しくボタンを連打し始めていた。ラスボスにでも差し掛かったのだろうか。
私は二人の邪魔をしないように、と孤爪の後ろに回り込んでリュックを軽く引いた。
それどころではないくらいにゲームに集中している孤爪は、私にされるがまま大人しく後ろに下がった。
一歩、クロとの距離ができた。
「よ、よかったら。何かお礼させてください…!」
赤面したマミが、潤んだ瞳でクロを見上げる。
私は孤爪のリュックを掴んだまま、クロの背中を見る。
「礼って言われても…ねえ」
背中越しでもわかるくらいに困った様子のクロが、ガシガシと頭を掻いた。
「んー、どうすっかな」
そう小さく言ったクロが、チラリと私を振り返っては閃いたように笑った。
は…?なに…?
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クロいいよね - 完結おめでとうございます とっても面白かったです!! (2022年11月21日 22時) (レス) @page50 id: 18092cdeea (このIDを非表示/違反報告)
ちあ。(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます!毎日更新楽しみにしていました。私自身、自分は流されないように頑なになりすぎていたんだな、と作品を読みながら思いました。周りに合わせることも流されないことも、両方器用にできるようになりたいって思いました! (2019年10月14日 1時) (レス) id: 2013350887 (このIDを非表示/違反報告)
momx(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです。 (2019年10月13日 17時) (レス) id: 2de1bab8eb (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵だなと思う作品は小鈴さんの作品がほとんどで…。とても楽しまさせて頂きました。 (2019年10月13日 11時) (レス) id: 5f1f2e19c0 (このIDを非表示/違反報告)
usagicyanda(プロフ) - 完結おめでとうございます!丁度一年ほど前に私もこの主人公と全く同じ1つ上の人気者の先輩と付き合っていました、ほんとに全く同じ状況で涙がこぼれました..その先輩は晒すだけ晒して守ってくれませんでしたが... けど主人公ちゃんとクロが幸せになれてよかったです! (2019年10月13日 3時) (レス) id: cef44ace1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月29日 17時