ネコ騙し合い愛【黒尾鉄朗】

男子バレー部とマネージャー ページ48

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「黒尾さんちわっす！」
「うーっす」
「集合！」






引退してからも、俺はちょこちょこ部活に顔を出していた。


俺って、いい先輩だろ？後輩思いってやつ。


こんなこと言ったら、すげー顔されんだろうな。


まぁ、まだ少し研磨が心配ってのもあるが、それは思ったよりも杞憂だったりする。


あと、気がかりなことがもう一つ。









「あー、あのさ」









俺はよく彼女に馬鹿にされる寝癖頭を雑に掻きながら、目の前に並んだ二年生連中に視線を走らせて見流す。









「コイツ、なに」









俺が指差した先に、ざわつき始める。









「黒尾さん！俺この間言ったじゃないスか！」








誰もその状況を説明しようとしない中で、山本が口を開く。









「ちょっと、人のこと指差さないでくれますか？」








一歩前に出たソイツが、俺の指を握って見上げる。









「いっつ！」








俺が顔を歪めたのは、握られた指が思い切り反り返されたから。









「うちの！新しいマネージャーです！」








山本の張り上げた声が、静かな体育館に反響する。







「…」







パチパチと山本が手を叩く。









「おい！盛大な拍手！」









山本が拍手をするように言うと、わっと盛大な拍手が沸き起こる。


当の本人はというと、何を照れているのか山本に「余計なことしないで」と若干顔を赤らめて小突いている。


この様子じゃ、自己紹介は済んでいるらしい。









「お前」









俺はソイツの目の前に立つ。









「俺が引退した途端マネージャーやるって、俺への当てつけかなんか？」









おまけに俺には報告が一切ないときた。


山本から事前に聞いていてこの場に来たわけだが、毎日待っていたが、とうとう俺が本人の口から聞くことなく入部当日を迎えてしまったわけだ。









「黒尾先輩がマネージャーやってほしいって言ったんじゃないですか」

「えっ！マジっすか！黒尾さんが頼んでくれたんスか！」

「ちげーよ」








山本が嬉々と目を輝かす中で、俺は間髪入れず否定する。


まぁ確かに言ったけど。言ったけど、よ。







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