約束 ページ7
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「朝、何で逃げたのよ」
「いえ、逃げたというよりチャイムが鳴ったので」
「先輩の話とチャイム、どっちが大切なのよ!」
貴方こそ、この状況を理解しているのかと、思わず突っ込みたくなる。
告白された身で、まだ教室にその人がいるんじゃないのか…?
俺に油を売っている暇があるのか…?
「それでだよ、赤葦クン」
ポン、と俺の肩を叩く。
だめだこの人、数分前のことなんて完全に忘れてる。
「Aさん、今朝のことも邪魔したことも謝ります。ですから、早く戻ってくだ、」
「先輩の話はちゃんと聞こうね、赤葦クン」
いつもと変わらない笑みなのに、威圧的に感じるのは何故だろう。
口を閉じて、次の言葉を待つ。
「昨日の埋め合わせと、ハンカチのお返しを兼ねて」
俺の横に並んだAさんが、俺の肩をグイっと重力に逆らうなとでも言うように真下に力を込める。
俺は顔を歪めて、膝を折って屈む。
「今日の部活のあと、ご飯行こう!」
屈んだ俺の肩に腕を回して飛び跳ねるAさんに、俺はそういうことかと一人で納得する。
ていうか、俺の予想少し当たった。学食ではなかったけど。
「この間おいしい定食屋見つけてさ〜!あ、勿論私の奢りだよ!」
俺の肩を揺らすAさんから、廊下の窓から吹き込む風に乗って柔軟剤の香りが鼻を掠めた。
「いい?赤葦」
肩を組んだまま俺の顔を覗くAさんに俺が頷くと、彼女は嬉しそうに笑った。
教室にいるあの人は、ほったらかし。
「じゃあ、俺は部活に戻るので」
Aさんの腕を外して、俺は彼女の背中を教室に押し込む。
「赤葦、先帰ったら怒るからね〜!」
そんな彼女の声を背に、俺は体育館へと戻った。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時