覗き見 ページ6
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そういえば、Aさん何を言おうとしていたんだろう。
数学の授業を受けながら、ふと今朝のことを思い出す。
あの流れ的に、
「じゃあここの問いを───」
学食奢ってくれる、とか?
「えー、今日の日付は───」
言いそう。あの人なら、言いそう。
「じゃあ、赤葦。ここ、前に出て解いて」
…最悪。
*
「あれ?木兎はー?」
「知らね。アイツいつも一番早いのにな」
「そういえばさっき、すごい泣きそうな顔した木兎とすれ違ったけど」
「なんで声かけなかったんだよ?」
「あの、例のモードだったから」
『あー…』
放課後。
いつもなら張り切って一番に部室に来ている木兎さんの姿が見えず、仕方なく俺が呼びに行くことになった。
粗方、教室にいるだろうと思い、三年生の階に上がる。
「────君が、好きだ」
ふと聞こえた声に、俺は足を止める。
なに。告白…?
「好きとか、簡単に言わないで!」
空き教室から、聞き覚えのある声が耳に届く。
ドア窓から隠れるように覗くと、Aさんがいた。
なんて現場に居合わせているんだ俺は。
早く木兎さんを探しに行かなければならないのに、とんだ足止めを食らっている。
無視して通り過ぎればいいのに、何してるんだ俺は。
「でも俺は、君を愛しているんだ!」
あ、愛…?
俺は思わず目を見開く。
「そんなの、ずるい」
その時、ドア窓越しにAさんとばっちりと視線が交わった。
俺は本能的に身を低くして息をひそめた。
隠れるのは、悪いことをしている自覚があるから。
「あかーし!覗き見なんて趣味悪い!」
勢いよく開けられたドアを見ると、Aさんが目を細めて俺を見下ろしていた。
「すみません。木兎さんを探していて」
俺は動揺しながらも、平然を装い立ち上がる。
「木兎?木兎なら今朝の小テストの再試受けてると思うけど」
それならそれで連絡の一本くらいしてくださいよ、と心の中で木兎さんに言って肩を落とす。
「お邪魔してすみませんでした」
「ほんとだよ、もう」
腰に手を当てて頬を膨らませるAさん。
ちょっと、指で突きたくなる。
「そういえば赤葦」
踵を返そうとした足を止める。
この人、今告白されてたんじゃないのか…?
俺に構っている場合ではないのでは…?
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時