意地悪キス ページ43
.
この人は、こう見えて繊細だ。
「赤葦は私のことなんてどうでもいいんだ!うわぁぁぁああん!」
放課後の教室で、机に突っ伏して大声を上げるAさんに俺は肩を落とす。
「少しは寂しがってよ!こうして毎日会えなくなるんだよ!赤葦はそれでいいの!」
俺はAさんが座る前の席の椅子を引く。
どんなに嘆いても、現実は変わらないのに。
「別に、会おうと思えば会えるじゃないですか」
俺の言葉に、顔を上げたかと思えばプイッと視線を窓の外に投げる。
あーあ。完全に拗ねてる。
Aさんは、都内の大学への進学が決まっている。
「そうだけど、さ」
机に頬をつけて唇を尖らせる彼女に、俺は立ち上がって窓際に立つ。
「あかーしぃ、私寂しいよー」
ガンガン机を叩いて再度騒ぎ出すAさんの手を掴む。
「ちゃんと、会いに行きます」
いつでも会える距離だ。
寂しい思いなんて、させない。
「わ、私も会いに行くもん」
潤んだ瞳で俺を見上げるAさんに、俺は口角を上げる。
「赤葦」
俺の隣に立って、窓際に背を向ける彼女が何かを躊躇っている。
何かを言いたそうにする彼女の言葉を待つ。
「…赤葦。ここ学校だけど、…していいかな」
わかっていて、あえて「なにがですか」と聞くと、顔を赤らめながら「…キス」と小さく答える。
―――毎回伺いを立てて。本当に律儀な人だ。
俺が鼻で小さく笑うと、Aさんが「ダ、ダメならいいけど」とスカートをギュッと握る。
頬を染める彼女が、本当に可愛くて。
たまに意地悪してしまうのは俺の性分。
「いいですよ」
俺の言葉に一瞬にして笑顔になった彼女に、俺は身を屈めて唇を重ねた。
「ふ、不意打ち!」
「キスには変わりありませんよ」
「心構えってのがあるでしょう!」
もう何度したかわからないキスに、いつまでも慣れる様子のない彼女。
どこまで俺を煽るんだこの人は。
「なら。もう一回、しますか」
「も、もう知らない!」
彼女が鞄を手に持って背を向ける。
そんな小さな彼女の背に、俺は満足げに笑って鞄を肩に掛けて。
窓から差し込む夕日に照らされた背中が、やけに熱く感じた。
.
369人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時