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白雪姫 ページ33

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「…白雪姫」




俺は台本の表紙に大きく書かれた文字を読み上げる。


白雪姫って確か、下働きの娘が命を守るために逃げた森で毒林檎を食べて永遠の眠りについて、それで、なんだっけ。


「その白雪姫が私でさ」と照れながら答える彼女。






「で、俺に王子役をやれと」
「うん。だめ、かな」




彼女の懇願した表情に負け、俺は渋々承諾した。





「オヤ? コレハ ウツクシイ オジョウサン ダコト」
「ネムッテイルノカイ?」
「シンデイル? ソンナ」

「赤葦大根役者!」




俺の硬すぎる演技に楽しそうにお腹を抱えて笑う彼女。
俺は恥ずかしくなって、顔を隠すように口元に手の甲を当てる。





「え、なんでやめちゃうの赤葦」

「Aさんが笑うからでしょう」

「えー、だって赤葦面白いんだもん」

「…」

「わかったわかったごめんって!もう笑わないから」




次は、と。Aさんが俺の持つ台本を覗く。


顔、近い。


優しい香りが鼻を掠める。





「ここ」




彼女が指したのは。







「本当にそこやるんですか」

「や、やる。だって私こういうシーン毎回緊張して固まっちゃうんだもん。あっ、赤葦で練習させてよ」






嫌だったら別にいいけどさ、と付け足す彼女はどことなくぎこちない。




―――【王子が眠る白雪姫に口づけをする】




…‘口づけ’。







「あ、あれだよ?するフリだよ!?実際にするわけじゃないし!」

「焦りすぎ」





俺の言葉にAさんは笑って誤魔化し、敷き並べた机に腰を掛ける。


でも、内心焦っているのは俺の方。


靴を脱いで机に横たわったAさんはギュッと目を瞑っている。


…俺はどうしろと。


ガチガチのこの人を見ると、自然とこっちの緊張は解けるけど。


何度台本を見たって【王子が眠る白雪姫に口づけをする】しか書いてない。


その先は、もう目覚めた白雪姫に対する台詞だし。


台本をジッと見ている俺に痺れを切らしたAさんが体を起こし、俺の手を机に置いた。


まるで、この間の保健室での事を再現して思い出させるかのような体制。







「こ、こう、するの」






俺のネクタイをグイっと引っ張り、顔を近づける。


寸前で腕に力を込めて止まる俺の数センチの距離には、彼女の綺麗な顔。


頬を赤く染めて、目を開けようとはしない。


白い肌に長いまつげ。でも、顔はやっぱり赤くて。







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設定タグ:ハイキュー , 梟谷 , 赤葦京治   
作品ジャンル:恋愛
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時

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