怠惰 ページ21
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夏休みが終わると、長期休暇の怠けを払拭するようにやってくる学校祭。
今は校内がやたらと騒がしくなる学校祭準備期間だ。
放課後。
俺はと言うと学校祭準備にいそしむ生徒を差し置いて、木兎さんに連れられるがまま体育館で二人、練習に付き合っていた。
「木兎さん、俺そろそろ戻りたいんですが」
木兎さんが抛るボールを、木兎さんの打ちやすい位置にトスを上げる。
「だーってよ、ずっと休んでたら体なまっちまうよ」
それもそうですが。
「みんなクラスのために頑張っている中で、俺たちだけ自分のために練習しているのはいかがなものかと」
「いーんだよ、見つからなきゃ。バレなきゃ問題なーし!」
「あー!いた木兎!!!」
高く飛んでスパイクモーションに入っていた木兎さんは、呼ばれた声に反応して打つタイミングを逃しピタッと着地する。
…言ったそばから。
「いで」
俺が高く上げたトスが、着地した木兎さんの頭に落ちた。
ナイストス。
「くっそ!もうバレた!」
頭を抱える木兎さんの腕を、体育館に入ってきたAさんがしっかりと捕まえる。
「バレないとでも思った?詰めが甘いんじゃないの、バレー部主将さん?」
「わ、わかったA!ちゃんとやるから今日だけ見逃してこの通り!」
床に手をついて頭を下げる木兎さんに、Aさんは動じることなく引きずっていく。
…このやり取り、ここ数日で何回見ただろう。
「A〜、俺が悪かったって!」
叫ぶ木兎さんに、俺は憐みの目を向けていた。
「A!なんで赤葦には怒らないんだよ!不公平だ!」
木兎さんの言葉に、Aさんはボールを手に取る俺を見て息を吐く。
「馬鹿。赤葦はアンタに付き合わされただけでしょう」
「お前だって、ちょこちょこ抜けて部活行ってるだろ!俺知ってるんだからな!」
「私は当日演劇の発表があるから例外なんですーっ!ちゃんとクラスの人にも断り入れてますーっ!」
「畜生!」
Aさんは、騒ぐ木兎さんの背を体育館の外へと追いやる。
「またね、赤葦」
笑って手を振るAさんに、俺は頭下げた。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時