ハンカチ ページ3
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「A〜!」
ある日の部活帰り、木兎さんが外を歩くAさんを見つけて大きく手を振る。
「あ、木兎〜!赤葦〜!」
気づいたAさんが、長い髪を揺らしてこっちに向かってくる。
「今から飯行くんだけど、お前も行かない?」
「あー、行きたいんだけど、まだ片付け終わらなくて」
雲から顔を出した月が、Aさんの顔を照らす。
「あーそうなの?お前なんか顔についてる」
「え?嘘、絵の具かな。小道具作ってたから」
木兎さんの言葉に、白くなった頬を擦るAさん。
「そこじゃないって、ここ」
そう言って木兎さんがAさんの頬を親指で拭う。
「あ、やべ。伸びちった」
「はぁ?なにしてくれるのよ木兎!」
手の甲で雑に擦るAさんに、俺はポケットからハンカチを出して差し出す。
「強く擦ったら、赤くなりますよ」
差し出すハンカチを受け取ろうとしないAさんに、俺はハンカチを頬に当てがった。
「濡らして軽く拭くと取れると思います」
「汚れちゃう」
Aさんが頬に当てたハンカチを手に取る。
「いーから素直に受け取れよ。な?赤葦」
肩にずっしりとかかった重みは、木兎さんが俺の肩を組んだせい。
たまに空気を読んでほしいと思うときもあるけど、逆にそれがちょっと助かるなって思う時がある。
このままハンカチを突っ返そうとするAさんに、俺は勝てる気がしなかったから。
「汚れちゃってもいいの…?」
紺色の生地に黄色のチェック模様のハンカチを手に、俺を見上げるAさんに俺は「どうぞ」と頷く。
「ありがとう。ちょっと、借りる」
笑うAさんに、俺は短く返事をした。
「でも待って。ハンカチについた絵の具が取れなくなったらどうしよう赤葦!」
俺のジャージをくい、と引っ張って困った表情をするAさんに、木兎さんが「心配性だなあ、Aは!」と腕を組んで大きく笑った。
「別にいいですよ、安物ですし。Aさんがよければ、あげます」
だから、気にせず使ってください。
そんな意味を含めて言った俺の言葉に、Aさんが驚いたように見上げる。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時