染められた林檎【赤葦京治】

掴めない人 ページ1

.







俺の最近気になる人は────






「あかーし！こっち来て！早く！」





木兎さんの女バージョンみたいな人。






「なんですか」

「ちょいちょい」






手招きして窓の外を眺める彼女に、俺は隣に立つ。







「あかーし、あれ、お団子みたいじゃない？ほら、丸いの三つ。あれに櫛が刺さってれば完璧なんだけどな〜」






おいしそう。
と口元に指を添えてよだれを拭う仕草をする彼女に、俺は窓の外の空を見上げる。







「どれですか。どこにもそんな雲ありませんけど」







目を細めるけど、そんな雲どこにもない。


寧ろ雲一つない快晴の空だ。







「どこ見てるの赤葦。そっちじゃないって。アレ」







彼女が指さした先は、ベンチで並んで仲良く談笑をしながらお弁当を食べる３人の女子生徒。








「あの３人のお団子、おいしそうじゃない？」







この人が言っているのはあの３人の女子生徒の髪型。


頭のてっぺんで丸く纏められた髪型を見て言っている。







「食べる気ですか」

「まっさか〜。私のことなんだと思ってるの」

「さぁ」






表情を変えることなく言う俺に、彼女は「ひどいな〜」と頬を膨らませる。


ほんと、掴めない人だ。








「赤葦、元気？」

「はい、元気です」

「ならもっと元気そうな顔で言ってよ〜」






ふわり笑って俺の髪に触れるこの人は、きっと俺が手を伸ばしても届かない。




────儚い、蜃気楼のような人。








.

出会い→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す