心配とお節介 ページ19
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「次は、来るのか？」
「次？」
ボールを抱えて立ち上がると、うまく抱えきれてなくて落としたボールが遠く転がる。
あわあわしていると、私のこぼしたボールを五色くんが拾い上げる。
やっぱり、背、高い。
「春高代表決定戦」
一歩、五色くんが私に近づく。
───春高代表決定戦。
あの時、私が白鳥沢に行くと決めた舞台。
頑張っている人たちの力になりたいと、夢を抱いたあの舞台。
「うん」
短い言葉だけど、真っ直ぐ切り揃えられた前髪の下の目を見て、強く頷く。
すると五色くんは、満足したように笑った。
「もっと、練習しないと」
ガコ、とボールがカゴに吸い込まれていく。
「オーバーワークはダメだって、」
昔、兄がよく父に言われていた言葉。
五色くんが私をまっすぐ捉える。
「
──‘俺みたいな凡人が、白鳥沢でレギュラーでいるにはひたすら練習するしかねえんだよ…！’
あぁ、それ、知ってる。
その今にも泣きそうな、でもどこか遠くを見据えている、何かを決めたその目。
そんな兄を見てきたからこそ。
「でも過度な練習は、」
兄は、もう選手じゃない。
高校時代白鳥沢の正セッターとしてエースに数々のトスを上げて、将来も有望視されていた兄は、もう選手じゃない。
キュッ、と。
気づいたら、手を少し伸ばしたら届くところに五色くんがいて。
眉をひそめて、私を見下ろしていた。
「努力しても追いつけない俺の気持ちが、お前にわかるのかよ！」
肩が跳ねた。
五色くんの低い声が、私たちしかいない広い体育館に響く。
わからないよ、五色くんの気持ちが私にはわからない。
でも、わかろうとする努力はできる。
「ごし、」
「わかんねえのに、偉そうなこと言うな！」
あ、だめ。
引き結んだ唇が震える。
ガコ、五色くんが乱雑に投げたボールがカゴに入る。
ボールの勢いに乗ってカゴが動く。
私、何か変なこと言った…？
「私は、心配して、」
「余計なお世話だ」
なに、それ。
もう行け、五色くんが背中で言ってる。
「お、おかっぱのくせに…！」
私が精一杯振り絞った捨て台詞。
背後で「お、おかっ！？」って言う五色くんの声が聞こえた気がしたけど、私は無視して鞄を持って体育館を飛び出した。
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あまね(プロフ) - 3年ぶりも大好きです (2月18日 3時) (
レス) @page42 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
hwanieee - 私が好きな自信満々ででもまだ完璧じゃなくて繊細な五色くんがいて感動しました！ (2月12日 10時) (レス) id: 307954f471 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの？私バカなの？((((喧しいわ (2021年8月14日 20時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
和敬 - 出会って1年と経ちますが、今でもこの小説だけは何十と読み直してる位 大好きです。甘酸っぱくて、だけどちょっと、もどかしさもあって 。本当に素敵な作品をありがとうございました！ (2020年11月9日 0時) (レス) id: a0a88ff10f (このIDを非表示/違反報告)
てつこ - 最高の夢をありがとうございます (2020年1月28日 1時) (レス) id: d5585a65a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年8月25日 22時
