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キミのチアリーダー ページ26

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「全国に行って、牛島さんみたいな人がたくさんいた。改めて自分の弱さが分かった」







その言葉に、私はバレー部の応援に行けなかったことを悔やむ。







「もっと練習しないと、課題を潰していかないと、あの人には一生勝てない」






彼は、私じゃないどこか遠くを見据えている。


掛ける言葉も見つからず、私が小さく名前を呼ぶと「悪い、しんみりしたな」と笑った。


苦しくて立ち止まってしまいそうなとき、私と違って彼には ‟逃げる” という選択肢はない。


まるで【努力の塊】みたいな人だ。


選手としての強いプライドが、そうさせているんだ。


私なんか、到底敵いっこない。


そしてきっと、目標の【エース】になったとしても、決してそこで満足しない。


さらに上を目指すのだろう。







「私、決めた」






ボールに触れている指に力を込める。








「私、五色くんのチアリーダーになる」








私の言葉に、五色くんが目を丸くする。









「は、は!?お前が、俺の…?何言っ、」







私と自分を順に指す彼に、私は深く頷く。






─────誰かのための、チアリーダーとして。







「A」







少し照れたように頬を指で掻きながら視線を逸らす五色くんに、私は何も考えずに首を傾げる。









「それ、言ってて恥ずかしくないのか…?」








その言葉に、私は自分の言葉を思い出す。


思い出すまでもなくほんの少し前のことなのに、無自覚で言い放った言葉に、顔が急に発火したように熱くなった。








「あ、や、そ、そうじゃなくて、そうじゃなくてですね。いや、そうじゃないわけじゃないんですけど。あー、えっと」







咄嗟にボールで顔を隠して慌てて言葉を並べようとするけど思うように頭が回らず、しどろもどろになってしまう。


そんな私に、五色くんが大きく笑って「涙出る」と言って目に指を添えた。







「それじゃ、まずは俺が全国行かないと話にならないな」





言って手を伸ばす五色くんに、私はボールをふわりと舞わせた。


それをすくい上げるように綺麗に受け取った五色くんに、私は「ナイスキャッチ」と言った。








心の雲が晴れて、灰色から快晴へ。









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設定タグ:ハイキュー , 五色工 , 白鳥沢   
作品ジャンル:アニメ
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あまね(プロフ) - 3年ぶりも大好きです (2月18日 3時) (レス) @page42 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
hwanieee - 私が好きな自信満々ででもまだ完璧じゃなくて繊細な五色くんがいて感動しました! (2月12日 10時) (レス) id: 307954f471 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年8月14日 20時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
和敬 - 出会って1年と経ちますが、今でもこの小説だけは何十と読み直してる位 大好きです。甘酸っぱくて、だけどちょっと、もどかしさもあって 。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2020年11月9日 0時) (レス) id: a0a88ff10f (このIDを非表示/違反報告)
てつこ - 最高の夢をありがとうございます (2020年1月28日 1時) (レス) id: d5585a65a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年8月25日 22時

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