自惚れ ページ30
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雨の日以降、私はあからさまに木兎を避けるようになった。
あの次の日もお昼休みになると、木兎はいつもと変わらない様子で「昼行こうぜ!」と私の席に来た。
昨日のことは、まるでなかったかのように。
それは、私には関係のないことだと言われている気がして。
実際関係ないから、触れるつもりはないが。
「ごめん、今日ちょっと先生に呼ばれてるから」
「え、そーなの?待ってようか」
「ううん、時間かかりそうだから先食べてて」
「あーそ?」
理由をつけては、木兎の誘いを断るようになった。
移動教室のあとには、毎回木兎は私の席に座っていて近くの席の人たちと楽しそうに談笑していた。
それを見ては逃げるようにして踵を返していた。
そんな私に、木兎のお陰で話すようになった人たちが喧嘩したのかと心配して声を掛けてくれた。
私が木兎を避ける明確な理由は、ない。
自分で勝手に傷ついて、顔を合わられなくなって、逃げてるだけ。
何故傷ついたかなんて、答えは簡単だ。
―――少し、ほんの少し。期待していた自分がいたから。
自分は木兎の特別だと、思い込んでいた。
でもそれはいつも一人でいた私への木兎の優しさで、私は、木兎の沢山いる友達の中の一人にすぎない。
それを知っても、私の中ではやっぱり木兎は特別で。
だからこそ、どんな顔して会えばいいのかわからなくて。
会わない日数を重ねるだけ、木兎に会いたいってずるい考え方をする自分が嫌で。
嘘を吐くことが嫌で人と関わることを制限していたのに、自分に嘘を吐き続ける矛盾。
辛くて、どうしようもなく苦しくて。
陰口の内容が【木兎に付き纏ってる女】から【木兎に飽きられた女】に変わっていたことも、気にならないくらい。
別に、今まで通り一人になるだけ。
わかっていても、寂しいと思ってしまうのは、木兎と一緒にいた時間が色濃く残っているから。
誰かと一緒にいる楽しさを、知ってしまったから。
それでも、自然と木兎を目で追ってしまう自分には、嘘、つけないよなぁ。
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アニメしか勝たんっ!! - やっぱり、木兎さんはかっこいい...! すっごくキュンキュンしました! それと、赤あしの片思い... 素敵な作品ありがとうございました!! (2021年9月6日 19時) (レス) id: a9d6af11eb (このIDを非表示/違反報告)
しきし(プロフ) - 木兎が好きで色々な木兎作品を読みますが、結局小鈴さんのこの作品に戻ってきてしまいます、何度読んでも好きです!! (2020年8月21日 20時) (レス) id: 46b82dd2cd (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 尊い。私ごときの語彙力じゃ表せないです。なんか、もう、尊い。 (2019年11月24日 22時) (レス) id: 4e49721770 (このIDを非表示/違反報告)
c.f(プロフ) - 番外編読みました。私のツボを抑えておられますね…最高です。そして実は短編集とかもいける口では…?と思ってしまうほど纏まった内容でドキドキが止まりませんでした!また更新楽しみにしてます! (2019年10月4日 21時) (レス) id: 05c431cb99 (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - 通知がきて飛んで来ました!やっぱり木兎さんの書き方上手ですね。強引な感じも好きです。そして作者さんも好きです。これからも楽しみにしてるので更新頑張ってください!!! (2019年10月3日 18時) (レス) id: 1247715456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年7月30日 20時