木兎の彼女は私なのに。【木兎光太郎】

感情の葛藤 ページ39

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あの日。



貴方を追いかけたあの雨の日。



俺もあの場にいた。



Aさんが陰に隠れて、木兎さんと誰かが話しているのを聞いて、息を殺しているのを見ていた。



走っていったのを追いかけて、引き留めた時、長いまつげが涙で濡れているのか雨で濡れているのかわからなかった。



でも、目から頬に伝わった涙を見た瞬間、あぁこの人は木兎さんが好きなんだって、痛感した。



俺はいつまでもあの人には敵わなくて。



悔しいのに、いつまでも憧れの存在であってほしいと思う自分もいて。



これで、綺麗に身を引くつもりだった。



自分の気持ちを伝えるつもりなんて、一切なかった。



俺のせいで、あの人を泣かせるなんてさせたくなかった。困らせたくなかった。








‘この人の好きな人は木兎さんだ’







そう言い聞かせる毎日にも嫌気がさして。



でも少し意地悪すると、俺にも笑ったり怒ったりする表情を見せるAさんが好きだっていう感情は増していくばかり。



やめられなかった。



あの人の涙を拭った時に、とっくに腹をくくったはずなのに。




でもきっと、俺が自分らの邪魔をしていると思っていたAさんも限界で。



そう思われても仕方のないことを、たくさんした。



こうするしか、なかった。







―――俺は、Aさんが好きだ。









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