ぎゅっと、16 ページ16
さてはて、時は巡り、寒さの厳しい真冬。
野渡の怪我もすっかり良くなって、現場で元気に活躍しているようだ。
相も変わらず伊達と一緒だけど、流石に友達相手に嫉妬はしなくなった。
でも、
「野渡さん! 今日もカッコイイです!!」
「え? あはは、本当か? ありがとなー」
これはちょっと見逃せない。
顔を赤らめ、勇気をだして話しかけたのであろう女の子の頭を撫でている野渡をジト目で見つめる。
「…………野渡」
「ん? 萩原、お疲れさん」
俺が声をかけると話していた女の子に「またな」と爽やかに手を振ってこちらに向かってくる。
その姿にもムッとして、恐らくそれが顔に出ていたのだろう。だって野渡が呆れ笑いを浮かべている。
「どーした。可愛い顔が台無しだぞ?」
「やかましい。そーやってすぐ誰彼構わず頭撫でるのやめろって言ってるだろー」
「人聞きの悪い……」
近づいてきてすぐに俺の頭も撫で始めた野渡に文句を言えば、「じゃあやめていいのか?」なんて意地悪な質問が飛んでくる。
分かってる。野渡のそれはもう習慣に近いものだということくらい。
それに、俺が1番甘やかされてるってのも。
今日だって、わざわざ現場から俺を迎えに来るためだけに警視庁にまで戻ってきてくれたのだ。
その優しさはすごく擽ったいけど、暖かで手放し難い。
ぽんぽん、と軽く2回叩かれた手は、ナチュラルに俺の手を掬って絡めとる。
当たり前のように繋がれた右手が、むずむずする。
寒い空気に当たる体と対照的に、温かな人肌の温度に包まれた右手。
ぎゅっ、と握れば、同じ強さで握り返される。
唐突にあぁ、幸せだなって思って鼻の奥がツンとした。
少し後ろを歩いてた距離を縮めるように足を早めて、野渡の隣に並んで、少しだけ、寄り添ってみる。
小さく笑う音がして、それが酷く優しかったから、
ぎゅっとぎゅっと、繋いだ手を強く握った。
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和美/美香 - どういたしまして♪いえいえ。 (2019年3月20日 23時) (レス) id: 1f2c06e01c (このIDを非表示/違反報告)
フィラン(プロフ) - さーもんまりねさん» わ〜、わかりみありますか〜!! こちらこそお読み頂いて感謝です〜!! (2018年11月30日 21時) (レス) id: e3629716db (このIDを非表示/違反報告)
さーもんまりね(プロフ) - 受け主地雷分かりみしんどいです。攻め主君最高でございました!!素晴らしい作品をありがとうございました! (2018年11月30日 0時) (レス) id: cf8a3e5bab (このIDを非表示/違反報告)
フィラン(プロフ) - k373さん» ありがとうございます〜! そう言っていただけると書いてて良かったなぁ、って思えます(つω`*) これこらも楽しんで頂けるように精進して参ります(*´▽`) (2018年11月20日 23時) (レス) id: e3629716db (このIDを非表示/違反報告)
フィラン(プロフ) - 和美/美香さん» ありがとうございます! 楽しんで頂けたのならなにより♪ (2018年11月20日 23時) (レス) id: e3629716db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フィラン | 作成日時:2018年11月7日 0時