食 ページ18
走るのが速いと評判の女の子
ピアノと歌がとても上手な女の子
絵を描くのが上手な女の子
お菓子作りが上手な
料理が得意な女の子
掃除が上手な女の子
とっても綺麗でスタイルの良い
綺麗な髪を、綺麗な瞳を
綺麗な足を、綺麗な手を持つ女の子
気付いたら皆、居なくなってた
小さいときから気付くと周りで女の子が居なくなってた
初めは走るのがめっちゃ速い女の子
見つかったのは血塗れのその子が履いとった靴だけ
次はピアノと歌が上手かった女の子
見つかったと言うか、あったのはピアノについとった血だけ
絵がめっちゃ上手かった女の子は水入れにその子の血が入っとった
お菓子や料理が得意な女の子はレンジの中に入ってた鍋の中に爪が一つ入っとった
掃除が上手かった女の子は髪の毛が箒に絡まっとった
とっても綺麗でスタイルの良い
綺麗な髪を、綺麗な瞳を
綺麗な足を、綺麗な手を持つ女の子
この子は痕跡も何もなく居なくなった
皆ずっと探しとる
俺も探しとる
大好きな女の子やったから
変なやつに連れてかれたんじゃないか
変なやつに食べられたりしてへんか
心配やったから
「ゾム君、今日も来てくれたの？」
「だって心配やん。いなくなって寂しいやん」
「ありがとう、そう言ってくれるのゾム君だけよ」
「そうなん？今日も一緒に探すん手伝うな」
「毎日ありがとうね」
「ううん、大丈夫やで」
「気を付けてね」
「うん！」
女の子の家に行ったらお母さんが探しに行くところやった
だから声かけて、自分が行くことを伝えた
だって、心配やもん
あの子見付けるの自分やないと
大好きな大好きなあの子見付けるのは僕やから
他の人に見つかったら連れてかれてしまうやん
だから僕があの子のとこに毎日行く
誰も探してないと伝えるために
僕に依存させるために
「君の家に行ったけど楽しそうにしとったで。居なくなった君の事なんて皆忘れたみたいに。やっぱり君の事なんて誰も気にしてないんよ」
『………』
「そんなに泣かんといて。早く食べたくなってまうやん」
『……っ！』
「涙ですら美味しそうやな」
『…っ……』
「もう……」
食べてもいいよな
そう言って彼女の首に噛みついた
やっぱり美味しいわ
次は誰にしようか？
そう言った彼の頭には狼の耳があった
川の近くで見つかったのは血塗れの服と何かの獣の毛が一本
．
．
彼は人間だったのか？
それとも
……？
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