拝啓、顔も知らないあなたへ

四十六通目 ページ47

「電話番号教えて、近づこうって意図を感じて離れて行ってくれたら、それでいいって思ってたんです…」



そうじゃなかったとしても、迷惑だって、これ以上近付くなって言ってほしかった。

それなのに…。

あなたの声を聞くと、その覚悟が揺らいでしまう。



壱「……はぁ…そっか」

「……え…？」

壱「…俺、嫌われたのかと思った」

「っ…！」



そんな…そんなわけない。



「き、嫌いなわけないです…」

壱「俺も、嫌いじゃないです」

「えっ！？」



彼は私と違って、はっきり言った。



壱「…俺が、女性と関係を作らないようにしてるのは、事実です」

「っ……」

壱「…臣さんから、聞きました？」

「…はい…しかも…あの電話も強制的なものでしたし…壱馬さんにとっても…私という存在は、不本意だと思って…」



もし、お兄ちゃんの…登坂広臣の妹だから、とか…

そういう理由で手紙を交わし続けてくれていたなら

私は、つらいけど…。

壱馬さんの邪魔にはなりたくない。



壱「…手紙、やめたいですか」

「っ……」

壱「…それとも次からは…電話がいいですか」

「え…」

壱「…俺はやめたくないです」

「っ！」

壱「…俺と関わることが、Aさんの心を苦しめるなら…やめます」

「………」

壱「でも俺は…Aさんとの繋がりを、消したくないです」



彼の言葉に、真剣な声色に目を見開く。



「…どうして、そこまで…」

壱「…自分でも分からん。でも…楽しいんです。Aさんに手紙書くのも、もらうのも…好きなんです」

「っ……」

壱「ちょっと手紙が来ないだけで、メンバーにもバレるくらい落ち込んでたし」

「え、ええっ？」

壱「Aさんのせいやで」

「ご、ごめんなさいっ…」

壱「ふっ笑 冗談だよ笑」

「っ…」

壱「…でもこうして久しぶりに声聞いたら尚更やめたくないって思った」



壱馬さんも、楽しいって思ってくれてたんだ…。

…彼自身だって、これがよくないことだって分かってるのに。



壱「…それに、不本意なんかじゃありません。俺は、Aさんのこと…」

「っ！？」

壱「っ…ほんまに…っいい人やと思ってるし…」

「あっ、ありがとう…ございます…」



な、なんでだろう、今一瞬、告白されるかと思った…。

そ、そんなわけないのに…。

でも…壱馬さんが私に、少なからず好感を抱いてくれてるのを知った。

…そんなこと、言われたら…嬉しくなっちゃう。

四十七通目→←四十五通目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す