拝啓、顔も知らないあなたへ

三十五通目 ページ36

臣「…お前はファンに申しわけないって思ってるかもしれないし、壱馬に迷惑かけてるかもって思ってるかもしれないけど」



…バレてる。



臣「…壱馬も俺も、芸能人以前に一人の人間で一人の男だから」

「っ……」

臣「誰とどういう関係を築くかはあいつが決める。だから…」



芸能人って理由で、あいつから離れないでやってほしい。



そう私の目を見て言ったお兄ちゃんに、驚いた。

…お兄ちゃん、本当に壱馬さんのことが好きなんだね…。

怖かったら逃げていいって、言うと思ってた。



「…ごめんね、お兄ちゃん」

臣「………」

「私、甘えてばっかりだ」



登坂広臣の妹として生きるのが怖くて

お兄ちゃんに妹がいること自体隠してもらって

会社でも隠して、好きな人にも隠して。

ずっと、芸能人だからって、お兄ちゃんと線引きしてた。

お兄ちゃんはずっと、私のお兄ちゃんで。

壱馬さんは、壱馬さんなのに。

そうやって線引きして、何度二人を傷つけたか分からない。

自分の身を守るために…。


…あの電話の後でも手紙を書いてる時点で、私にもう、芸能人だからって言い訳も通じないね。

もう一度声を聴きたいなんて願いも

まだ手紙を続けていたいなんて思いも…。

本来持つことすら叶わないのに。

贅沢者だな、私。


…でも分からないの。

あなたがどうして、私と手紙を続けてくれているのか。

この関係があまりにもあやふやなもので…蜘蛛の糸のように切れやすいものだから…。

彼にとって、私との手紙がどういうものなのか。

それを問いかけたとき…この関係が終わる予感がして、怖い。

…でも、怖がっても、いられないか。



臣「まぁ、可愛い妹だからな、甘えて当然だろ」

「…私も、お兄ちゃん大好き」

臣「知ってるよ」



そう優しく言ってくれたお兄ちゃんに、涙が出そうになった。

かっこよくて自慢のお兄ちゃん。


壱馬さんからの手紙、もう来てるかな。

…このまま手紙を続けるのも幸せかもしれないけど。

図々しくも、声が聞きたいって思ってしまうの。

あぁ…相手が普通の人だったら、そんな小さな願いでこんなに悩んだりしないのにな。

でも…相手が普通の人だったら、こんなに相手を想って気遣うこともないのかもしれない。

…私、少し…前に進んでみようと思うよ。

……たとえ、手紙が終わるような結果になっても…。





＊
お星さまが真っ赤になりました！
ありがとうございます！
これからも精進していきます！

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