拝啓、顔も知らないあなたへ

三十四通目 ページ35

「やっぱり私は、お兄ちゃんが登坂広臣であることを受け入れてくれる人がいいな…」



そしてそれを黙っててくれる人。

倉本さんがそうじゃないとは言わない。

っていうかそこまで彼のこと知らないんだけど。

…やっぱりお兄ちゃんが大好きだもん。

お兄ちゃんに恨み持ってる人とは…。



臣「…お前が好きになったら好きにすればいい。でも俺はおすすめしない」

「…まだ好きとかの段階じゃないよ。今回は…ちゃんと見定めたいの」

臣「…そっか。っていうか俺、うってつけのやつ紹介したよな？」

「…うってつけ？」

臣「この前電話しただろ」

「……っも、もしかして、壱馬さんのこと言ってるの！？」

臣「お、壱馬さん呼び」



意外と仲良さそう？

そう呟くお兄ちゃんだったけど、それどころの話じゃない！



「あ、あれって、ただ仲のいい後輩を紹介したかっただけじゃないの…？」

臣「ん？それもあったけど…」



あった、けど！？



臣「恋愛下手同士をくっつけようと思って」

「そ、そんな意図があったなんて…」



っていうか、恋愛下手…？



「か、壱馬さんって芸能人でしょ？」

臣「うん、でもあいつファンのために女性と関係作らないようにしてんの」

「え……」

臣「そんなあいつが、臣さんが女だったら付き合いたかったって言ってたから」

「それで私を紹介したの！？」

臣「うん」



…そうだったんだ…。

女性と関わらないようにしてるのに、私と関わっちゃったのか…。

…私、彼の邪魔になってる…？

だって…臣さんみたいな人と付き合いたいってそれって…お世辞じゃん。



臣「…嫌だった？」

「…ううん、でもそれ聞いたらちょっと…壱馬さんにも、壱馬さんのファンにも申し訳なくなった」

臣「って、一回電話しただけじゃん」



そうだけど、そうじゃないの。

私今、彼とお手紙でやり取りしてて…。

ってこのことお兄ちゃんにも言ってないんだった…。



臣「悪かったよ、お前がそんな顔するとは思ってなかった」

「…ううん、あの電話は楽しかったの」

臣「………」

「…楽しかったから、尚更…」



尚更、彼が女性関係に気を使ってるって聞いて、ショックだった。

彼と電話したあの時、こんなに手紙が続くなんてお互い思ってなかったはず。

プレステのソフトのお礼がしたいってだけだったし。

あの時は返事が欲しいって言ってくれたけど…。

今は…どうなんだろう…。

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