拝啓、顔も知らないあなたへ

三十一通目　side川村壱馬 ページ32

「最近なんか忙しそうですね」

壱「そうですか？いつもと変わらないっすけど」

「うーん、なんか最近早起き増えましたね。前は僕が起こすことも多かった気がしますけど」

壱「あー…まぁ、生活改善的な」

「それはいいですね、頑張ってください」

マネージャーの言葉に小さく笑みを返した。






壱「…まぁ、別に意識して早起きしてるわけじゃねぇんだよなぁ」



ただ、彼女から送られた手紙の返事を書きたくて、朝にその時間を作ってるだけだ。

夜はゲームしたり、疲れて寝ることが多いから、朝返事を書く。

昨日届いたばかりだと…気持ちがはやって目が覚めてしまう。

週に一回、二回のはずなのによく気が付いたな、さすがマネージャー。

それに移動中はポストにいけないし。

朝出したほうがいろいろ都合がいい。



壱「……壱馬さんへ」



彼女の綺麗な字で書かれる俺の名前が好き。

昨日から楽しみで取っておいた便箋を開ける。

それにしても、うちのマネージャーは鋭い。

…もしかしてマネージャーに勘づかれたんかな。

結構な頻度でやり取りしてるし、いつも事務所に送って貰ってたし、ただのファンレターじゃないって、怪しまれた？



壱「…俺の家の住所に送って貰うように書いていいかな」



いや、そうだよな、ただのファンレターやない、よな…。

手紙を開けると写真が入っていた。



【壱馬さんへ

糖質制限中なんて、ストイックですね。

私もダイエットしなきゃなって思いつつも、ついパクパク食べちゃいます。

料理も料理のゲームも一緒にやってくれる人がいればいいんですけど…

残念ながら今はいないんです笑

漫画もショッピングも音楽鑑賞も大好きですよ。

衝動買いしちゃうときもありますけど…

壱馬さんはしっかりしてそうだなって思ってます。

Aより】



壱「…そっか、彼氏とかいないのか」



それにどことなくホッとしている自分がいる。

今は、ってことは前は一緒にやってくれる彼氏がおったんかな。

…どんな男と付き合ってたんやろ。

そういえば臣さんは、あの時俺が、臣さんが女性やったら付き合いたいって言って、Aさんを紹介してくれたんやっけ。

あれってやっぱり…Aさんは臣さんに似てるってことなんかな。

……余計に気になる。

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