拝啓、顔も知らないあなたへ

二十三通目 ページ24

「お兄ちゃんが私を誰かに紹介したの初めてなんです。だからすごく仲いいんだなって思って」

壱「え、ほかの三代目のメンバーさんと会ったことないんですか？」

「はい、ないですよ」

壱「マジで！？」



めちゃくちゃ驚いてる川村さんの声に、こっちが少しびっくりした。

まぁ、そうだよね、びっくりするか。



「だって私一般人ですもん。芸能人と知り合っちゃダメじゃないですか。それに、リスクがありますし」

壱「……あー…そう、っすよね」

「？？」



あ…もしかして…。

川村さんって、やっぱり…。



臣「お、結構話せてんじゃん」

「お、お兄ちゃん！」



そう考えたところで、お兄ちゃんがお風呂から上がってきた。

これまた上半身裸で、綺麗な腹筋を見せて。



臣「え、なんで顔見せてないの」

「だってすっぴんだし」

臣「別に可愛いからいいじゃん」

「よ、よくないの！」



お兄ちゃんに可愛いって言われて嬉しくないわけじゃないけど。

それとこれとはまた違うの！

私が許せないの！



臣「悪い壱馬、そろそろ切るわ」

壱「いえ、こちらこそすいません、突然お電話してしまって。…Aさんも、ありがとうございました」

「い、いえ、こちらこそありがとうございました」

臣「見えないと思うけど、お辞儀してる」

壱「ははっ笑 そうですか笑 それじゃあおやすみなさい」

臣「おやすみ」

「おやすみなさい」



プツンっと電話が切れる。



「も、もうお兄ちゃん！どういうつもり？」

臣「ん？壱馬嫌だった？」

「い、嫌じゃないけど！緊張するよ！」

臣「でも結構話せてたじゃん」

「そうだけど…だいぶ気を使ってもらっちゃったし…」



それに私…最後めちゃくちゃ失言しちゃったよね…。



「……はぁ〜、もう寝る！」

臣「ん、客室で寝ろよ」

「はぁい」



お兄ちゃんの言う通り客室に行って、ベッドに倒れ込む。

…川村さん、どんな人だろう。

やっぱり、顔見ればよかった？

でもそしたら私の顔も見られるし…。

ってダメダメダメ！

相手は…多分芸能人だし…興味を持っちゃダメ！



「……いい声だったな」



Aさん。

そう呼んだ彼の声が、いまだに頭に残ってる。

手紙の時もそうだけど

彼はいつも私を眠れなくする。

でも明日も仕事だ。

布団にくるまって目を閉じた。

…明日お手紙出しに行こう。

それだけを考えて、眠りについた。

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