拝啓、顔も知らないあなたへ

二十一通目 ページ22

臣「じゃあ好きなタイプは？」

？「え、えぇー…」

臣「俺には言えない？」

？「いえ、今はそういうの全然考えてなくて…どんな人だろ…うーん」

臣「？」

？「…うーん、そうっすね、やっぱり尊敬できる人がいいです。臣さんが女性だったら付き合いたいですもん」

臣「へぇ……」



ちらり、一瞬視線を寄こされた気がした。

…なんか嫌な予感する。



臣「今、ちょうどいいのがいるわ」

？「え？」



来い来いって呼ばれてる気がするけど、私じゃないよね？

いや、この家には私とお兄ちゃんしかいないけど。

お兄ちゃんが立ち上がってこっちに来た。



？「え？臣さん？」

「うわわっ！ヤダヤダ、何しようとしてるの！？」

臣「いいからいいから、俺の可愛がってる後輩に紹介しようと思って」

「いいですいいです、私そういうのいいって昔から言ってるじゃん！」

臣「アレだよ、電話の相手。川村壱馬。プレステの購入者だよ」

「えっ！！」



無言の時間が続く。

いや、だからと言って…。



壱「え、お、臣さん？」

臣「なに？」

壱「…もしかしてそこに、例のプレステの人がいるんですか？」

臣「そ、俺の妹」



例のプレステの人で通じるってどんな関係！？



臣「じゃ、俺風呂入ってくるから」

「はっ！？」

臣「壱馬と喋っといてー」



そう言ってさっさと洗面所に入っていったお兄ちゃんに、私はどうしていいか分からなくなる。

確実にカメラには映れない。

だっていますっぴんだし、お風呂上がりで髪も濡れてるし。



壱「……あの」

「あっ、は、はい！！」



カメラには映らず、画面も見ず、スマホスタンドの後ろから話しかけている状態。

それでも彼の声は部屋に響く。

…いい声だな…。



壱「俺、川村壱馬って言います。お兄さんの登坂広臣さんにはいつもお世話になっていて…」

「あ、いえ！こちらこそ！いつも兄がお世話になっております！」

壱「ふっ笑」

「…え？」

壱「あぁ、すんません。手紙通り、真面目な人やなって思っただけです」



関西弁混じりの敬語でそう言う彼に、なんだか少し恥ずかしくなる。



壱「…それで…」

「は、はい」

壱「…手紙、読んでくれましたか」

「……手紙？」

壱「…ちょっと前に送ったんやけど…」

「っあああ！！す、すいません！お返事書いたのに出すの忘れてました！」



山中さんのこともあってすっかり忘れてた…！！

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