拝啓、顔も知らないあなたへ

十二通目 ページ13

家から元彼の物がだいぶなくなってきた。

あれもこれもゲーム購入者の川村壱馬さんのおかげだ。

神様仏様川村様、あなたからいただいた三万円、本当に泣くほど嬉しかったです。

お兄ちゃんからは、喜んでた、という結果だけ来て、私はそれだけで嬉しくなった。

頑張ってくれよプレステくん！！



「おっと、遅刻しちゃう…」



バタバタと準備をして慌てて仕事場へ向かった。



「おはようございます」

「おはようA、なんか機嫌よさそう？」

「うん！元彼に買ったプレステがほかの人のもとで活躍中らしい」

「あ、あれ売ったんだ？」

「そう！頑張って買ったから、ほかの人が楽しんでくれてよかったって思って」

「もう、アンタそんなちっちゃいことで喜んで…。アンタが幸せにならないと意味ないでしょ！」

「はい…」



桃花ちゃんの恋愛指南に正直に頷く。

ちなみに桃花ちゃんは大学時代からの彼氏とお付き合いしているらしい。

もう三年目だけどラブラブなんだって。



「羨ましいなぁ〜、私三年も続いたことないやぁ」

「アンタは異常なのよ。イマイチ好みのタイプも分からないし」

「…でも、本当に、既婚者じゃなくて浮気もしなくて、DVでもない、優しい人がいいな」

「A…。もう、今度彼氏に男紹介してもらうように言ってあげる！」

「ほんと！？ありがとう！！」

「それより！山中！気を付けなさいよ！」



小声であたりを警戒するようにそう言った桃花ちゃんに頷く。



「また妙なやつに好かれて…」

「うん…全部断る予定」

「アンタ、押しに弱いんだから本当に気を付けなさい。山中、仕事できないくせにこんなことばっかりして…」

「あ、あはは…私の好み言ったはずなんだけどな」

「あぁ、登坂広臣よりいい男ってやつ？あれマジだったの？」

「…でもそれ聞いて口説いてくるなんて思わなくて…」

「まぁ、そうよね〜」



たとえ私の気が狂って山中さんと付き合ったとして、お兄ちゃんに紹介した日には…。

呆れ通り越して床に転がるくらい爆笑される気がする。

だって自分より年上の義弟ができるとか最悪過ぎない？

絶対いやじゃん。



「仕事場の人と微妙な空気になるの嫌だったんだけどね〜…」

「気を強く持ちなさいよ」

「うん」


お兄ちゃんにも、もう迷惑かけないようにしないと。

ちゃんと全部断って見せる！！

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