百二十通目 ページ21
「…幸せだったって伝えてほしい」
臣「……分かった」
「っ…タクシーで帰るね」
臣「…気を付けて帰れよ」
「……うん、またね」
関係者席から、会場を出ていく。
外に出れば、もうすっかり暗くなっていて
ひやりと体が冷えた。
…あの時、壱馬さんは…。
手が冷たいって言って、私の手を握ってくれてたなぁ…。
…あぁもう、どうして今日はこんなに壱馬さんのことを思い出しちゃうんだろう。
あーあ、やっぱり吉野さんに直接お礼言うべきだったかな！
他のメンバーさんにも…会ってすぐ逃げ出しちゃったし！
せっかくだし、景さんともライブに行きたかったな！
あー…でも、あの人は、EXILEグループ全体でダメなんだっけ…。
でも大丈夫、またダイエットも続けて…
いっぱい努力して、綺麗になったら…。
「今日の壱馬くんマジでヤバかった！」
「あのファンサマジヤバい！！」
「あんなこと言うなんてめっちゃ珍しいよね！！」
「私ファンレター送ったけど読んでくれるかなぁ〜」
「壱馬はファン大事にしてるから絶対読んでくれてるよ！！」
「っ…」
会場の外は興奮したように話すファンでいっぱいだった。
そんな人の波を搔い潜るようにして、歩き出す。
こうしてファンに混ざってる私は、何も変わらない。
ただの一般人。
興奮したファンを横目に…。
ボロボロ溢れる涙を手で拭い続けた。
ファンの誰よりも近かったはずなのに、今じゃ…手紙を書くこともできない。
あの幸せな日々が、どうしても忘れられなくて…苦しくてたまらなくなる。
あの日々以上の幸せを…知ることなんて出来ないってどこかで確信してるの。
でも、これでいいはずなの。
ファンの知る通り、あの人はファンを大切にしてる人だから。
あんなに完璧な壱馬さんを見れてよかった。
これからもっと人気になって、もっと有名になる。
あなたの旅路に私は邪魔すぎる。
前から分かってたことなのに。
どうしようもない恋心に涙が出てくる。
…弱虫な私を許してほしい。
本当は分かってるの。
あなたが芸能人なのを理由に、あなたに近付くのを怖がってる私は大馬鹿者だって。
お兄ちゃんにも吉野さんにも背中を押してもらって
幾度とないチャンスを貰っておいて会えもしない私を…
あんな馬鹿な女ほっとけって、
そう思ってください。
そうじゃないと…。
「…ずっと、好きなままなの」
会場の前にはタクシーがたくさん並んでいて
私はその中の一台に乗り込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 895人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彼岸花(プロフ) - riku推しさん» コメントありがとうございます！もう一気に書いちゃいました笑 ご心配ありがとうございます！私が楽しいと思う範囲で頑張ってるので大丈夫です！続編もよろしくお願いします！ (2023年3月17日 19時) (
レス) id: f47c3cd118 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - あすかさん» コメントありがとうございます！ようやくここまで来れました！続編もぜひ楽しみにしていてください！ (2023年3月17日 19時) (レス) id: f47c3cd118 (このIDを非表示/違反報告)
riku推し(プロフ) - 3話もありがとうございます！毎日の楽しみです！付き合う前も、あとも、2人の雰囲気はもちろん、周りの空気を想像してたら幸せな気持ちになります〜！次が楽しみなのは間違いなく本音ですが、無理ない頻度にしてくださいね！次の更新が待ち遠しいです♡ (2023年3月17日 18時) (レス) @page50 id: 6429ca0a87 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - やっとで、やっとでハピエンになりかけてる....！架空の物語だとわかってても2人の恋を応援しちゃいます！続きを楽しみにしています！頑張ってください！ (2023年3月17日 18時) (レス) @page50 id: b7702e35c5 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - くま太郎さん» コメントありがとうございます！大好きだって言ってくださるなんて…！嬉しいです！とっても励みになります！これからも頑張ります！ (2023年3月15日 23時) (レス) id: f47c3cd118 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彼岸花
| 作成日時：2023年2月20日 18時
