八十三通目 ページ34
「もうすぐ家だよ」
壱「…ん」
ぎゅっと確かめるようにさらに強く握る大きな手。
私の心臓、全然鳴りやまないよ。
家について、ゆっくりと彼の手が離れていった。
二人の間に冷たい風が吹いて、なんだかすごく寂しく感じた。
「…今日はありがとう」
壱「こっちこそ」
「……会えて、よかった」
壱「…これで、終わりやないよな」
そう言った彼に、ドキリとしたのは何でだろう。
…もう、会えないかもしれないって、心のどこかで思ってたからかな。
自分でも気付いてなかったけど、図星だったのかもしれない。
そんな思いを振り切るように微笑んだ。
「手紙…」
壱「！」
「…お返事、待ってるね」
壱馬さんは、私の字が綺麗で、好きだって言ってくれたから。
…今日で、最後なんかじゃない。
あなたが私と話したいって思ってくれてたら…私は何度でも、貴方の名前を書く。
「…またね」
壱「…うん」
「…バイバイ」
壱馬さんに手を振って笑った。
その時。
手を引かれて、カツカツとヒールが疎らに鳴った。
足元が覚束ない私を受け止めるように
きつく抱きしめられた。
背中に回る手が熱くて大きい。
「っ…！！」
トクントクン、彼の鼓動が聞こえる。
壱「…ごめん、許して」
切なげな声で言う彼が、さらに私をきつく抱きしめる。
そんなの、ずるいよ。
許してなんて言われて…離れることなんて、できるわけない。
だって、私の心臓、こんなにうるさくなってる。
…心地いいって、嬉しいって思っちゃってる。
赤くなった顔を隠すように胸元にうずめれば
頭を撫でてくれる大きな手。
…ダメだよって言えない。
見られちゃうよって、こんな外でしたら、誰かに見られるよって…
言葉が出てこない。
壱「…嫌なら、拒んで」
彼が私の頬を撫でて、唇を撫でる。
彼の手が私の顔にかかった髪を払う。
慌ただしく、まるで急ぐみたいに彼がマスクを外した。
「か、壱馬さっ…」
彼を呼ぶ、私の声が途切れる。
…瞬間、月明りに照らされた二つの影が
重なった。
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彼岸花(プロフ) - 夜宵-yayoi-さん» コメントありがとうございます！続編もよろしくお願いします！ (2023年2月19日 23時) (
レス) id: ea547107ff (このIDを非表示/違反報告)
夜宵-yayoi-(プロフ) - 続編楽しみにしてます！ (2023年2月19日 21時) (レス) @page50 id: 213e291fb2 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 紫雨さん» コメントありがとうございます！続編も見ていただけると嬉しいです！！ (2023年2月19日 21時) (レス) id: ea547107ff (このIDを非表示/違反報告)
紫雨(プロフ) - 続編楽しみにしてます！ (2023年2月19日 19時) (レス) @page50 id: 1db2654d16 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 紫雨さん» コメントありがとうございます！幸せになるまでもう少しかかりますので気長にお待ちいただけると幸いです！ (2023年2月17日 21時) (レス) @page46 id: f47c3cd118 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼岸花
| 作成日時：2023年1月24日 18時
