九十一通目 ページ42
「……だから…」
壱馬さんも、私なんか忘れて…。
あなたがやりたいと思う一番のことをして。
それが…私の願い。
…最後の想い。
そう、直接あなたに告げられるだけで、私はもう…。
壱「好きでした！！！」
清々しいほど、綺麗な声で
はっきりと、彼は言った。
壱「…出来れば俺が…幸せにしたかったわ！！Aさんのこと！！！」
ボロボロと、涙がこぼれた。
…ずるい。
ずるいよ、壱馬さん。
どうして、私の気持ちの蓋を開けるようなことを言ってしまうの？
喉から出る声を、必死に殺した。
好き、だったんだね。
…もう、今は違うんだねっ…。
「私もっ…壱馬さんが好きでした…！」
壱「っ……うん、知ってた…！」
受話器の向こうでからりと笑った彼は
きっと私が泣いてるって気づいてる。
…だって
彼の声も、震えていたから。
「…楽しかった…最後に会えてよかった」
壱「…俺も、楽しかった」
「…素敵な思い出を、ありがとう」
そう
これはもう、思い出だ。
夢のような、あの夜を貰えただけで
私は、幸せだった。
「……大丈夫だよ。壱馬さんは真面目で…誠実な人って、きっとファンだって分かってるはず」
壱「……うん」
「きっとすぐ、信頼も取り戻せるよ」
壱「…………」
「………お元気で」
目を閉じた瞬間、涙が頬を伝って流れた。
壱「……Aさんも…お幸せに」
もう、またねという挨拶はしない。
…出来ない。
「…さようなら」
壱「…っ……さようなら」
程なくして…ブツッと音がした。
ツーツー…と、別れを告げる音がスマホから流れ続ける。
ずるりと、その場にしゃがみこんだ。
「…っ…ぅっ…ううぅっ…」
溢れだす涙が、止まらなかった。
本気で好きだった。
本気で…あなたを愛していた。
顔も知らない、ずっと前から。
…もう会えない事実が苦しかった…。
…でも、ありがとう、壱馬さん…。
あなたに直接別れを告げられて…
私は嬉しかった。
…なにも言わず離れて行かないで…
言葉をかける機会をくれて
ありがとう。
…想いを伝えてくれて、ありがとう。
……大好きでした。
溢れる涙を止めようと見上げた夜空は
こんな時にも、星が輝いて美しかった。
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彼岸花(プロフ) - 夜宵-yayoi-さん» コメントありがとうございます！続編もよろしくお願いします！ (2023年2月19日 23時) (
レス) id: ea547107ff (このIDを非表示/違反報告)
夜宵-yayoi-(プロフ) - 続編楽しみにしてます！ (2023年2月19日 21時) (レス) @page50 id: 213e291fb2 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 紫雨さん» コメントありがとうございます！続編も見ていただけると嬉しいです！！ (2023年2月19日 21時) (レス) id: ea547107ff (このIDを非表示/違反報告)
紫雨(プロフ) - 続編楽しみにしてます！ (2023年2月19日 19時) (レス) @page50 id: 1db2654d16 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 紫雨さん» コメントありがとうございます！幸せになるまでもう少しかかりますので気長にお待ちいただけると幸いです！ (2023年2月17日 21時) (レス) @page46 id: f47c3cd118 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼岸花
| 作成日時：2023年1月24日 18時
