・005 ページ5
・
私は手に持っていた本を
ギュッと胸の辺りで抱き締めたまま動けずにいた。
視界の隅に男が担いでいた刀の先を
床に置くのが見えてゴクリと生唾を飲む。
そっと視線を右側に向けると
『……ッ！？？』
視線の先でその男は私の事を見下ろしていた。
氷のように冷たい視線。
物語でしか聞いた事のない話だけど
石化したみたいに体が動かなくなった。
＿＿ただ、私を無言で見下ろすその目の奥に
僅かに何かただならない物を感じた＿＿。
表情を一切変えること無く
無言で見下ろされ続ける事数秒。
私は咄嗟に謝罪の言葉を口走ってしまっていた。
『…あ、あの…ッ、ごめんなさいッ！』
「………なんで謝る」
『いや、見すぎ、て…ました……よね、』
鋭い視線に色の無い声が加えられ
思わずしどろもどろになってしまい
語尾が縮こまる。
言葉もなんか変だけど
そんな事考える余裕は無かった。
すぐ隣にはこちらに睨みをきかせ
刀を持った男がいるのだから。
本を抱く手に更に力が入る。
私はこのまま
彼に殺されてしまうのだろうか…。
なんて、最悪の事態を想像していたが
そんな想像に反して
頭上から「はァ…」と
小さく息を吐く音が聞こえた。
「安心しろ。そんな怖がらなくても取って食いやしねェ。」
『……す、すいません、』
「それに俺は、ガキの女には興味ねェ」
『ッ！？』
思わず勢いよく隣を見遣った。
……ガ、ガキ？
っそれより！！何で女だと分かった？
髪もきちんと帽子に入れ込んでるし
服だって男の人が着るような物を身に付けてるのに…。
男はやはり表情を変える事無く
棚に手を伸ばして本を一冊取ると
パラパラと捲っていた。
男は私の視線に気付いたのか
視線を本から此方へ向けるとそれをパタンと閉じた。
『…なんで、女だって…』
「声だ。無理矢理低く話そうとしてるのが分かる。…それに…」
『…？』
「普通ならそんな下手な変装、バカでも気付く。」
『ば、！？』
思わず出た私の声に
何を思ったのか男は「フッ」と吹き出した。
それを見て私は呆気に取られてしまっていた。
とても優しい顔をして笑うんだな、と思った。
同時に、どこか懐かしさを覚えたのは
気のせいだろうか…。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 198人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベビーカステラ(プロフ) - あんちょろさん» あんちょろ様！コメントありがとうございます！たった今、パスワード解除しました！これからも読んでもらえると嬉しいです！ (2023年4月3日 0時) (
レス) id: 6cc3977ac9 (このIDを非表示/違反報告)
あんちょろ(プロフ) - 楽しく読ませていただいています♪次のお話はパスワードついてましたがまだ編集中の未公開ということですか？ (2023年4月2日 0時) (レス) @page50 id: 67b3a9cf2e (このIDを非表示/違反報告)
ベビーカステラ(プロフ) - プスメラウィッチさん» 初めまして、コメントありがとうございます！勿論、オチはローさんにする予定です！これからも読んでもらえると嬉しいですっ！ (2023年3月24日 9時) (レス) id: 58c35d3d2b (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説はトラファルガーローオチですか？できればトラファルガーローオチでお願い出来ますか？続き頑張ってください。応援してます。 (2023年3月23日 21時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ベビーカステラ | 作成日時：2023年3月16日 13時
