翼を。125 ページ9
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「……母さんが好きだったんだ。父さんの晩酌につきあって、よく飲んでた」
突然話し出したオレに何も言わず、天馬くんはオレの顔を見つめている。その沈黙が、どこか心地よかった。
「両親は優しい人だった。仕事熱心で、親バカで……大好きだった」
だから、オレは苗字を手放したくなかった。
家にオレの写真はあっても、両親の写真は少ない。両親との繋がりを示すものは媛羅木という苗字と、両親と過ごした記憶だけ。
「ねぇ、オレが1番怖かったことは何だと思う?」
あぁ、両親のことは置いといてね、と思考を促す。
恐怖は人の思考を鈍らせる。その情報が正しいか間違っているかではなく、相手にとって正解かどうかを考え、自分の意思は二の次だ。
「……自分が消えること、か?」
「そうだね。それが引き起こすこと……"両親との記憶が消えること"が、オレは怖かったんだ」
「……!」
自分よりも何よりも、記憶が大事だった。自分が消えたらどうにもならないけれど、オレという自我が恐れたのは記憶の喪失。
これを幸に聞かれでもしたら、思いっきり殴られそうだ。
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とまと。 - 更新待ってます! (2021年3月2日 19時) (レス) id: 5e107264c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩崎葉 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時:2019年12月8日 10時