翼を。145 ページ29
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あの人の呪縛は強すぎて、オレ自身ではどうにもできない。
毒は馴染みすぎたら身体が毒だと感じなくなる。もしかしたら、今のオレも、あの人が造り上げた紛い物かもしれない。
逃げられない。
咲也くんと冷静に話す度に、脳が恐怖を訴える。
「__なら、Aさんが一からヒスイを創ればいいんですよ! 他のことなんて考えずに、自分で!」
「ヒスイを、創る……?」
闇に囚われかけた思考を遮るように、咲也くんは声を張り上げた。
オレの中には翡翠がいる。悲しい結末に囚われたまま、動けなくなってしまった気高い姫が。
翡翠のことを忘れて、一から自分の手でヒスイを造り上げる。
そんなことが、オレにできるのだろうか。
「ここには役を理解できなくて悩んでいても、一緒に考えてくれる仲間がいます。オレも、皆には助けられてきました」
彼はその大きな目を懐かしげに細めて、何かを思い出すように虚空を見つめている。
「オレ、役に正解なんてないと思うんです。皆が、自分が"これだ"と思ったものが大切なんです」
それに、オレはAさんに憧れていて……、と気恥しそうに彼は小さく笑った。
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とまと。 - 更新待ってます! (2021年3月2日 19時) (レス) id: 5e107264c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩崎葉 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時:2019年12月8日 10時