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翼を。141 ページ25
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＿＿あぁ、どうしよう。
自分の胸元を握りしめながら、大事に育てられた花たちの香りを乗せた夜風に当たる。
あの日のナイフのように冷たい風が、オレの頬を撫でた。
「(自分でも気づかなかった)」
紬に指摘されるまで、今の自分が"翡翠"になっていることに気づかなかった。
オレが演じなければいけないのはMANKAIカンパニーのヒスイなのに、あれじゃああの人の思惑通りだ。
「(……お前は、思ったりよりも深く根付いているのか)」
握りしめている手に熱が篭もる。
"翡翠"という存在がオレの中にいることは、この前知った。だから、救ってやりたいと思った。
でも、あの人の呪縛は思ったよりも強い。
「(オレがオレでありながら、ヒスイを演じないと意味がない)」
悔しい。
あの人に啖呵を切っておきながら、何も変われていない自分が。オレのために書いてくれた新しい物語を上手く表現できない自分が。
「(……どうしたらいい)」
どうすれば、オレはこの呪縛から逃れられる。どうすれば、自分の足で舞台に立つことができる。
あぁ、オレはなんて無力なんだ。
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作者名：彩崎葉 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時：2019年12月8日 10時
