【A3!】明の鳥【男主】 (ページ15)

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翼は。131 ページ15

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　ポンコツ役者から聞いたサングリアのこと。

　兄さんはオレの家に来たあのときから、両親のことを聞かれた以外で口に出したことがない。サングリアのことなんて、1度も聞いたことがなかった。

　そして、兄貴の中にいる翡翠の存在。

　自分に何が起きているのか理解していなかった今までとは違い、兄さんは自分と向き合おうと努力している。その結果、翡翠という存在を認知した。

「兄さんが幸せになれるなら、オレはそれでいい」

「ふふっ、幸はお兄ちゃん想いだね」

「……まぁ、たった1人の兄貴だからね」

　血の繋がりなんてどうでもいい。

　小さい時からオレのことを肯定して、オレの願いを叶えてくれた兄さん。ずっとオレを見守ってくれていた頼もしい存在。

　そんな人を他人だなんて、誰が言えるのだろうか。

「取り敢えず、兄貴を運ぶんだっけ。テンプレヤンキーが談話室にいたから呼んでくる」

「うん、お願い」

　オレのために練習したお菓子作り。オレのために買ってきてくれた本や裁縫道具。オレのために見せてくれた舞台衣装。全部、義弟(オレ)のために。

　兄貴は昔から、オレのために動いてくれていた。

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