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「あっ…」




嫌な匂いが鼻をついた

案の定、顔を上げるとそこは花屋で
エプロン姿の店員が、花を包んでいるところだった



見慣れた影、服、少し茶色くなった髪




「また会ったな、神ちゃん」




花束を抱えた神ちゃんが
ドアの鈴を鳴らして花屋から出てくる。

あの日あいつがあげていたピアスは、
今日も変わらず右耳に飾られている

とてもよく似合っている







「俺、行くわ」



何も悪くないとわかっているのに
逃げるようにこの場から去ろうとしている自分が嫌いだ



「しげ」



顔を見なくても、どんな顔をしているのか分かるのは
神ちゃんが、唯一無二の親友だからだ。




「話がしたい」




凛とした目でこちらを見る神ちゃんに
従わない選択肢なんて、ない




「おう」




微妙に動いた親友の表情は、
何かを堪えているようだった




「しげ」




抱えた花束から覗く、白いカーネーションがやけに眩しい



冷たい風が2人の間を吹き抜ける

まだ雪は、降っていない









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作者名: | 作成日時:2019年12月4日 11時

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