○（あなた） ページ9
月が雲に隠れて部屋の中が暗くなった瞬間
真剣な顔と上下左右していた指が、急にプツンと消えた
『あッ…』
＊＊＊＊＊＊＊＊
『・・・』
思考が止まったままどれくらいか時間が過ぎている
私は黒くなった画面からまだ目を離せないでいた
少しづつ動き始めた頭で考える努力をする
なんだったんだろぅ…
何を見たんだろう
「本当にあった…」みたいな体験なのだろうか
映画みたいに携帯から人が出てくるとか
…違う気がする
しかめっ面になったり、口を尖らせたり
忙しなく動く指先を、前髪の隙間から揺れる茶色い瞳を
もっと見ていたかった…
なんて事はない
カッコ良かったのだ
どストライクだったのだ
恐怖より欲望が勝った女の私の頭の中で
やっぱりあれは夢だった…とむりやり思う事にして
それならもう1度同じ夢を見させて下さい
月にお願いしようと夜空を見上げると、薄いウロコ雲がスッポリとその姿を隠していた
＊＊＊＊＊
目が覚めると太陽はすっかり準備万端で
テレビが、今日は全国的に洗濯日和だと知らせている
寝坊した事を後悔した
携帯に触って、いつもの待ち受けを見てなんとなくがっかりしながら着信確認
そろそろ起きよう
＊＊＊＊＊＊
洗濯や掃除と
やる事は沢山あるのに１日中携帯が気になって、何度も何度も触ってしまって少しも進まなかった。
最近は日が暮れるのが早くなってきたから
気がつくと
淡い水色の空の中で雲がオレンジ色に染められていた
あれから携帯には何の変化もない
やっぱり「酔っ払って見た夢だった」と思うべきか…
「もう一度」と淡い期待は持ったまま
＊＊＊＊＊
今夜は三日月だ
電気もつけないままの薄暗い部屋の中で、携帯をスタンドに乗せて頬杖をついた
雲間の月明かりで机に伸び始めた影に指で触れて「はぁ」とため息をついた…その瞬間
携帯が明るくなって
『！！！』
何か話しながらニコニコと嬉しそうに画面の操作をしている
画面が細くなって、両手で持っている感じ
画面の端の方に指先が触れた
その一瞬、画面には数人が映って、またすぐその人が映って
誰かと話しているのか、眉尻を下げて笑っている
唇のすぐ下に小さなホクロを発見して
急に唇を意識してしまった自分が恥ずかしくなった
景色が流れて、違う男の人達が映る
その人達も楽しそうに大きな口を開けて笑っている
あれ？見た事がある？
また凄い早さで景色が流れていきながら
プッ…と
黒くなってしまった。
部屋もまた
薄暗さに包まれた
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key(プロフ) - ふわりさん、はじめまして。感想ありがとうございました。なにぶん初心者なもので、勝手が分からずお礼が遅くなりすみませんでした。文章を作る難しさを感じ、自信を無くしていたので、素敵なお話しと言っていただきうれしかったです。ありがとうございました。 (2017年5月4日 18時) (
レス) id: 57cf30034c (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - はじめまして。こういうファンタジーな世界ってさじ加減が難しいなぁ、と思うのですが、このお話は不思議さの具合がちょうどいい！リアルからかけ離れすぎてると入り込めなくてしんどいけどとても気持ちよく入り込める世界観でした。素敵なお話でした。 (2017年4月26日 21時) (レス) id: aa255c5fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるいも | 作成日時：2016年10月28日 0時
