○（あなた） ページ1
取引先の会社に提出する資料に手間取って、出来た頃にはすっかり深夜になっていた
事務所を出ると以外と外は明るくて、月明かりの地面に黒く短い影を作る
『そうか満月なんだ…』
見上げると空には大きなオレンジ色の月が昇っていた
駐車場のススキが風に揺らされてサラサラと音を立てた
むき出しの腕が寒い
「日中は蒸し暑くなるでしょう」
お天気お姉さんの言葉を信じて薄手の半袖シャツを選んだ朝の自分を恨む
小走りに車に乗り込んでエンジンをかけた
「早く帰って温かいお風呂に入ろう」
アクセルを静かに踏み込んだ
＊＊＊＊＊
大きな池の畔にある小さな家にはもう私１人しかいない
一緒に暮らしていた祖母は2年前に亡くなった
花を愛する人だった祖母の庭は絶えず草花があり、家の中にも至るところに野の花が趣味良く、そしてさりげなく飾られていた。
どこにいても目に止まった花の名前を口にする人で、その影響を受けてしまった私が自然と草花に目が行ってしまうのは仕方ない事だろう
だから今も
「あれ…？」
あんな所に？
道路際まで迫っている山の側面に草木に混じって咲いていたのは珍しい月下美人の花のように見えた
安全な場所に車を停めて探す為に降りる
確か…この辺に…
………あれ…？ない…？
何度行ったり来たりしても見当たらない
おかしいな…
車まで戻ってキョロキョロと辺りを見渡していると、湖の方に高い木に囲まれた古い洋館が見えた
優しい色の街灯
庭には沢山のランプ
窓から漏れるやわらかな明かり
何故だかとても懐かしい感じがして自然と足がむいていた
近くまで行くと蔦に覆われて重そうなドアにはこんな夜遅くなのに「OPEN」の板が掛かっている
ドアのすぐ横の小さな窓から中をのぞいて
不思議な安心感に私の頬はゆるみ
手は吸い寄せられるように、ゴールドの丸いノブに触れていた………
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key(プロフ) - ふわりさん、はじめまして。感想ありがとうございました。なにぶん初心者なもので、勝手が分からずお礼が遅くなりすみませんでした。文章を作る難しさを感じ、自信を無くしていたので、素敵なお話しと言っていただきうれしかったです。ありがとうございました。 (2017年5月4日 18時) (
レス) id: 57cf30034c (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - はじめまして。こういうファンタジーな世界ってさじ加減が難しいなぁ、と思うのですが、このお話は不思議さの具合がちょうどいい！リアルからかけ離れすぎてると入り込めなくてしんどいけどとても気持ちよく入り込める世界観でした。素敵なお話でした。 (2017年4月26日 21時) (レス) id: aa255c5fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるいも | 作成日時：2016年10月28日 0時
