セカンドプロローグ １−➈ ページ9
「ハロー。俺のことはシャーリーでもアンリ様でも好きに呼んでね」
甘い声で告げられたハリーがころっと気持ちを転がされてすんなり頷きそうになったとき、隣から「嘘だろ！？」とこの上なく素っ頓狂な叫び声が聞こえた。
「シャーリー……君、マルフォイと仲良しだったの……？ しかも“アンリ”だって？」
「ミスタ・ウィーズリーも久しぶり。兄上によろしく言っておいてくれ。あぁ、チャールズの方だよ」
ロンは目を白黒させている。口も半開きだ。知り合いだったらしい。チャールズというのはさっき言っていたロンの長兄のことだろうから、正しくは知り合いの知り合いといったところかもしれない。
そんなロンに、ローブの男の子が困ったように頬をかいていたら、側にいたマルフォイにすぱんと頭を叩かれる。あまりに遠慮のない勢いにハリーまで身を竦ませた。
「ウィーズリーの奴と知り合いだったのか！？」
「別荘がルーマニアにあるんだ。ドラゴンの飼育場の権利は俺が持っているし」
別荘。飼育場の権利。ハリーの頭は突然放り込まれた特権階級の言葉に混乱しつつ、もしや彼らは歴史上存在していた貴族と呼ばれる身分ではないかと推察する。高圧的な振る舞いの所以はそこにあるのだろうか。もちろんだからといって褒められたものではないけれど、問答無用で殴りつけてくるダドリーとは比べるべくもない……いや、今さっき頭を叩いていたばかりだった。彼はダドリーと同じような性格なのか？
ローブの男の子はマルフォイの耳元に薄い唇を寄せて何事かを囁いている。彼らはどうにも気の置けない仲のようだ。ハリーはそう思ったが、一秒も置かずにローブの男の子が脇腹に肘を食らったのを見て閉口した。
一方、下手人であるマルフォイは万感を込めて溜息をつき、気取った仕草でハリーに手を差し出す。
「ポッター君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。そのへんは僕がおしえてやろう」
マルフォイが言葉の途中でロンにこれみよがしの嘲笑を向けたのをハリーは見逃さなかった。さっきまで、もしかすると彼らはそんなに悪い奴じゃないのかもしれないという希望を見出し始めていたが、いまの言葉でそれが一瞬で霧散した。
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作者名：砂な | 作成日時：2023年3月25日 23時
