ほつれたリボン ３−�� ページ36
*
飛行訓練が始まる木曜、つまり今日だが、ドラコは誰彼構わず話しかけては自分の箒の技術を自慢しあり、ロングボトムの赤い思い出し玉を掠め取って得意げだったり、実に楽しそうだ。シャルルへのいつもの目配せは従者もどきへ向けられている。シャルルはルビーの髪をくるりと指に巻いた。
その日の午後三時半、シャルルはスリザリン生の最後尾で正面玄関から校庭へと急いだ。箒日和の良い天気だ。傾斜のある芝生を下り、ドラコの視線を無視して列の後ろの方で止まる。時間ぎりぎりに着いたグリフィンドール生をマダム・フーチが急かし、皆で箒の横に立った。右側はグリフィンドール、左隣と背後は女子生徒だ。
彼女達は男と違ってシャルルをいないものとして扱うことが多い。そうでないのは、常にドラコに纏わりついて彼を倣うような態度を取るパンジー・パーキンソンだけだったのだが、今日は違った。
しかしシャルルはそれに構っていられるほどの余裕がなかった。
「右手を箒の前に突き出して……そして、“上がれ！”と言う」
古ぼけて小枝が飛び出たそれに手を翳す。上がりなさい、と呟いて数秒経ってから吸い込まれるように箒の柄が掌に収まった。自分を空中に連れて行く道具を手にしていると思ったら、まだ地面に足をつけているというのに胃がむかむかする。
一発目の叫び声と共に飛び上がった箒は少なかった。ポッターは柄を握りながらロングボトムの足元を見て微妙な顔をして、ドラコは周囲を見て自尊心の栄養を集めている。これから間違った持ち方をしていると指摘されることを思うと不憫だ。柄の持ち方によっては変に身体を捻っただけで体重を支えきれずに手首を折ることもあるので、その前にその道のプロフェッショナルに訂正されるのは喜ばしいことなのだけれど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：砂な | 作成日時：2023年3月25日 23時
