セカンドプロローグ ２−�� ページ14
悪目立ちしたくないので杖はしまう他なさそうだ。光源の少ない険しい小道を大勢の生徒が滑ったり躓いたりしながら黙々と進む。シャルルもびくつくドラコの手にもう一度指を絡ませ、牽引するようにして歩いた。
列の先頭にいるハグリッドが振り返り、何メートルも離れているこちらまで聞こえる声で「ホグワーツがまもなく見えるぞ。この角を曲がったらだ」と叫ぶと、生徒は歓声を上げる。直後に道が開けて大きな湖の畔に出た。向こう岸の城はシャルル達貴族にすら壮大に映る。ずらりと立ち並ぶ塔の窓が満天の星々を反射してきらきらと輝いていた。
シャルルの眼が正常なら、ポッターは映画で主人公役を任されていたダニエル氏のスワンプマンのようであったが、それでいながらその瞳は美しい緑色だった。本物のダニエル氏の目は光の加減で碧(みどり)に光る青色だ。このハリー・ポッター(せかい)は原作小説に忠実だった世界線の映画を元にした舞台というべきなのだろう。グレンジャーも前歯を大きくして髪のボリュームを増したエマ氏だった。
ホグワーツに着いたら他の主要人物も確かめてみよう。もしこの仮説が合っているならば、映画版ではなく原作を軸にして未来を予測することが出来る。もちろん、シャルル・アンリ＝サンソンという自己の存在によって、取り返しのつかない蝶のはばたきが生まれている可能性も捨てきれないのだけれど──段々と近づいてくるホグワーツ魔法魔術学校は、どうにも瑕疵ひとつない本物に見えて、シャルルはぼうっと思考を蕩けさせていた。
人波に押されて我に返る。シャルルはまだほんやりしているドラコをボートまで引っ張り、彼の従者もどきに声を掛けて乗り込んだ。紙面では鏡と表現されていた湖面が揺れる。それは闇夜を溶かし込んだような黒色だった。
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作者名：砂な | 作成日時：2023年3月25日 23時
