悪い噂 (ページ29)

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北斗に抱きしめられた瞬間、何故か涙が溢れて、
止まらなくなった

「はいはい」

って背中を一定のスピードでトントンしてくれる北斗

樹くんとは違って優しくて安心する匂い

樹くんとは違ってがっしりした身体

樹くんとは違ってふわふわな髪の毛

比べるのは間違っているけど樹くんと比べてしまう
樹くんのときには感じられなかった安心感を北斗には感じてしまう

それが良いことなのか、悪いことなのかなんてわかんないけど
今はこの温もりに包まれていたかった。

・

「落ち着いた？」

『ん、ありがと北斗』

「いいのよ、別に」

『馬鹿だ、って思ってるでしょ？』

その問いかけに

「うん」

ってなんの躊躇いもなく答えるのが北斗らしくて
笑ってしまった

「なあに笑ってんのよ、全然笑い事じゃないからね」

『だって北斗が素直だから』

「俺は思ったまま言っただけ」

で、

と続けて彼が口を開く

・

「樹とはどうなりたいの？」

そんなの、

私だって知りたいよ