悪い噂 (ページ16)

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ある日金曜日のこと、講義が終わって帰ろうとすると珍しく北斗から連絡があった

Hokuto今日ひまでしょ?俺の家集合ね

って、それだけ

暇人扱いなんて酷いもんだ、と思いながらも暇なことには変わりないから、分かったと連絡を入れておく

家に帰って少しだけラフな格好に着替えて北斗の部屋のチャイムを鳴らす

「はーい」という声は想像していた声とは違って、心の準備をする前にドアが開かれた

『樹、くん？』

「んは、Aちゃんいらっしゃい」

ふにゃっと笑った樹くんはスウェットにTシャツというラフすぎる格好なのにとても様になっていて目眩がする

部屋に入ると他にも数人女の子と男の子

あー、でも男の子の方が多いか

そこからは樹くんがみんなの紹介をしてくれて、なんとなく愛想笑い

こういう雰囲気にはやっぱり慣れないし、苦手
そう思ってキッチンにいる北斗のところへ逃げると

「ごめん、こーゆーの貴方苦手でしょ」

『なんで分かってて呼ぶのさ』

「樹が貴方を呼ぼうって言ったんだもん」

『っ、そんなん言われたら怒れない』

「ふは、本当に好きだね」

『うん、好きだよ』

そう、好きなんだよな、樹くんのことが

そんなことを思いながらキッチンから樹くんを見ると女の子の肩を抱いてビールのタブを開けているから目を逸らしたくなる

はぁ、と大きな溜息を吐くと馬鹿にしたように笑いながら「はい、これ持ってって」とおつまみ

『北斗って料理できるのね』

「まぁ一人暮らしなんで」

『料理出来る男はモテるよ』

「樹は出来ないけどモテるよ」

『樹くんはかっこいいもん』

「なにそれ、俺はかっこよくないの？」

『かっこいいと思うけどタイプじゃない』

「それは貴方の問題だ」

って、なんで北斗とはこんな風にテンポよく話せるのに「Aちゃーん！」ってなんの気もなく呼んでくる樹くんとはまともに話せないんだろう