悪い噂 (ページ35)

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「落ち着いた？」

暫くして顔を上げると優しすぎる笑顔を浮かべた北斗
優しいけど、眉毛を少し下げて、不安そうな

そんな表情

『ん、ごめん。北斗』

「いいよ、別に」

『なんで樹くんなんだろうね』

他にも男の子なんてたくさんいる
樹くんよりも絶対に良い人なんているって
そんなことは分かってる

分かってるけど、それでも樹くんが良いんだって
そんな私はおかしいのかな？

甘い甘い樹くんの毒にきっと、酔ってるんだ

.

.

「Aちゃ～ん！北斗ばっか構ってんのやだ！」

なんて呼ばれれば

『ごめんね、北斗。行ってくる』

って笑うしかなくて、嫌になる

呼ばれて、妬いてくれたのかな？って思う発言に
嬉しいって思ってしまう自分はきっと馬鹿なんだと思う

「行くなよ」

その言葉と共に北斗に腕を掴まれる

『へ？』

「行くなよ、もう、やめれば？」

『ほ、くと？』

消えてしまいそうな、小さな声
なのに私の腕を掴むその手は力強かった