悪い噂 (ページ33)

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『そ、うじゃないけど』

バクバクとうるさい心臓
なんて言えばいいのか分からなくて困る

下を向いていた顔を無理やり樹くんに上げられて
強制的に目が合った

「んは、顔真っ赤」

かぁいいね、なんて言いながら近づいてくる樹くんの
顔に驚きながらも『や、』って押すけどビクともしない

「俺に嫉妬させた罰ね」

そう言ってチュ、と軽く唇同士が触れ合い
ん、って甘い声が漏れる

「Aちゃんそんな声出しちゃだめよ」

なんて言うけど、すぐにケラケラ笑いだして
他のお友達さんたちに冷やかされる

樹くんは「かあいいっしょ」とか「お前らに可愛い声聞かせちゃった～」なんて言ってるけど私は恥ずかしくてそれどころじゃない

樹くんが私の腰をずっと抱いていたから離れられなかったけど、不意をついて抜け出すことができた

そして、逃げる先はやっぱり

「なに、また来たの？」

ってキッチンでゆっくりお酒を飲んでいる北斗の元

『もう無理、心臓持たない』

「人ん家でキスしないでくんね？」

『したくてしたわけじゃない』

「拒めよ、なに見せられてんのよ俺らは」

『知らないよ、見てたなら止めてよ』

「そっち行く体力なかった」

『ばか北斗』

「なんとでもどーぞ」

スカしてお酒を飲む北斗を軽く殴ってそこから樹くんの様子を見ると、私がいた場所は既に他の女の人が座ってて、肩を抱いている。

分かってる、私は樹くんのたくさんいる中の1人だってことくらい。でも、少しだけ特別だって思いたかっただけなんだよ。

「そんな顔するなら、やめればいいのに」

小さくそう言った北斗の言葉は聞こえない振りをした