日常へ ページ33
Side Takuya.K
扉を超え、長い廊下を抜けると、その先に光が見えた。
その光を目指して走ると、そこは大きな草原だった。
ここ、どこだ。
見渡す限りすべてが草原で。
何も目印になるようなものはなかった。
1「…ほんまに出られた」
4「あぁ」
信じられないという顔をしてあたりを見渡す晃一。
そんな簡単な会話をした瞬間。
ピーピーピーピー
大きな警告音が鳴りだした。
4「何、これ」
【倒壊シマス、離レテクダサイ】
数回繰り返しアナウンスが流れる。
そして、10回目。
大きな音を立ててそれは崩れていく。
数分もしないうちにその建物は瓦礫と化した。
「…そんな…」
瓦礫を前に、膝をつくA。
「…っゆ、すけ…」
隣に膝をつき、彼女の肩を支えて立たせる。
4「A、行こう」
この先、何があるかなんてわからない。
でも、今外に出られたんだからここから一刻も早く逃げなきゃいけない。
倒壊したそれを見たAは力なく俺にもたれかかりながらようやく歩き始めた。
何時間も歩いてようやく交番を見つけた俺たちはそこへ駆け込み保護された。―――――
――――あれからの数週間は一瞬だった。
警察に事情聴取され、記憶を頼りに瓦礫を探索したけど結局見つからなくていたずらと判断されて厳重注意をされた。
Aの憔悴は激しくいまだに入院している。
時折お見舞いに行くものの、あれからAの声を1度も聞けていない。
いつ行っても外をただぼーっと見つめるばかりで目すら合わない。
そんな彼女にどうしていいのかわからずにいた。
それでも、日常は過ぎていき、俺たちは悲しみや悔しさを抱えながらも日常へと戻っていく。
きっと、彼女をその時間が癒してくれる。
そう、思ってた。
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Orin(プロフ) - 鎖骨ちゃんさん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けてとても嬉しいです。コメント、励みになります。のんびりではありますが更新は続けていきますのでぜひまた読みに来てください (2019年4月11日 2時) (レス) id: c85c65d7e8 (このIDを非表示/違反報告)
鎖骨ちゃん(プロフ) - とても面白いです。更新楽しみにしております!! (2019年3月1日 17時) (レス) id: b22569305a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Orin | 作成日時:2019年2月17日 2時