�� ページ8
Side Ryohei
”佐久間くん”と呼び名さえも変わったことにどきっとした。
あぁ、本当に…
俺の言いたいことを態度から悟った彼女は申し訳なさそうに謝罪する。
そして、彼女は強がるようにして笑った。
「失恋しました！もう、これでちゃんと諦めます！今まで、聞いてくれてありがとう」
阿「い、や…えっと…ごめん。こういう時うまい言葉が出てこなくて…」
「大丈夫だよ。泣いたりしないから」
思うように言葉をかけられなくて、彼女に気を使わせてしまうかっこ悪い俺。
「たくさん泣いたから、今度はたくさん笑うの。」
俺の知らないところで、きっと俺の思うよりもたくさん泣いたんだろうね。
俺の知らない誰かに支えられて、起き上がって傷だらけでも君は前を向くんだね。
それが、彼女にとって、いいことなのかもしれないのに。
どこかショックを受けている俺。
ほんと…かっこ悪い。
阿「Aは強いね」
「全然強くなんかないよ。涼太くんにもきょもにもたくさん迷惑かけてる…」
阿「でも、ちゃんと前を向いてる。」
「それは、そうだけど…」
阿「でも、これでようやくほかに目が向けれるんじゃない？」
「え？」
阿「Aが佐久間を想うように、Aのことを想ってる奴、めちゃくちゃいるよ。」
「…うん」
少しだけ不自然な間が生まれた。
阿「誰かになんか言われた？」
「あー…うん」
阿「そっか。大丈夫？」
「混乱してるけど、ちゃんと向き合うから大丈夫だよ。」
阿「無理しないでね。」
そういって彼女の頭をなでると、目をつむって俺の手の方へ頭を傾けるA。
「ありがとう。時間、かかるかもしれないけど…それでも相手の気持ちを大事にしたいから無理なんかじゃないよ」
阿「話くらいなら聞くから。」
「うん、ありがとう」
本当は今日、俺も君に告うつもりだった。
でも、言えない。
何となく、今こうして前を向き始めた君が危うくて。
ただ傍で守りたいと思った。
そうしていつか…
いや、例えばそれが俺じゃなくても。
君が笑っていてくれるならそれでいいと思える日が来るかもしれない。
なんて、勇気の出ない負け惜しみかもしれないけど。
それでもいいや。
伝えるだけが愛じゃない、よね。
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作者名：Orin | 作成日時：2020年11月9日 0時
