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なんだこいつって思ったし、まじでうぜぇ女って思った。
けど、今思えば本気でそのころの俺ってかわいそうだったのかもしんない。
だって、どんなに女を抱いたところで満たされなくて心の奥にあいた穴を埋めるようにまた別の女を抱いてた。
そんな時、言われた”かわいそう”って言葉が妙に俺に残ってそれからついついAを気にするようになった。
そして、ずっとわからずにいたその意味を知った。
いつも、佐久間を見るあの目。
愛しそうに見つめて、佐久間と話すだけで幸せそうに笑う。
ふざけて触れあった後には満たされたように優しい顔をする。
その表情がどんな感情から来てんのか、なんで俺ががかわいそうなんだって聞いた。
そしたらさ。
田「『たった一人のことを想うだけで世界がキラキラに輝くのに、それを知らない樹はやっぱり可哀そう』お前がそう言ったんだよ」
切ない気持ちも
愛しい気持ちも
苦しい気持ちも
嬉しい気持ちも
全部たった一人の行動がベースになって、その人が中心に世界が回りだす。
叶わなくてつらいときがあっても、その人の一言で満たされちゃう世界があるんだって笑ったんだ。
その笑顔が可愛くて、きれいで。
何とも言えないその美しさに俺はどきっとして。
その一瞬で俺はたぶん、陥落したんだろーな。
その世界の中心が俺になれば埋まらない穴ごと包まれて満たされる気がしたんだ。
田「そんな可哀そうな俺に、佐久間に恋してるAがキラキラな世界を教えたんだよ」
Aが悲し気に笑うたびに俺の心臓もぎゅっと締め付けられて苦しくて。
Aが幸せそうにするたび、俺の胸も躍った。
田「こっち向いてもくれないお前の一喜一憂が、俺のベースになったんだ。」
Aの手を取り、見上げる形でまっすぐ見つめる。
田「A、好きだよ」
なぁ、俺、今どんな顔してんの？
お前が佐久間みるときのあの優しい顔？
愛しそうな顔？
「…樹」
戸惑ってるAの目が泳ぎ、そして伏せられる。
田「お前が佐久間のこと好きなのは重々わかってるつもりだし、そこ承知の上でお前のこと好きになってっから。そんな困った顔すんなよ」
立ち上がって乱暴に彼女の頭をなでてやる。
田「ただ、気持ち知っておいてほしいだけ。黙ってほかのやつに掻っ攫われんのだけは避けたかっただけ。混乱してるとこにわりぃな」
そういって笑ってやると、Aはわずかに涙ぐんだ。
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作者名：Orin | 作成日時：2020年11月9日 0時
