存在の大きさ ページ16
Side Daisuke
あの日と変わらない冷たい態度。
光のない目は、もう俺を映してくれなくて。
すべてを拒否してるその態度に、胸が痛い。
佐「…A」
名前を呼ぶのに、振り返ってはくれない。
「数分経ったら出てって。」
それどころかそういい放ってベッドに寝ころんでしまうA。
悲しくて、つらくて仕方ないのに…そばに居たい。
ここに居たいと思ってしまう。
佐「A」
こっちを向いて。
そう思いながら再び名前を呼ぶ。
佐「ねぇ、聞いてよ」
情けなく震えてしまう声。
こんなに近くにいるのに、なんでこんなに遠く感じるの。
佐「いやだ」
このまま離れていってしまうなんでいやだ。
俺は意を決して傍へと歩み寄る。
こっちを向いてよ。A。
彼女の体の上へ覆いかぶさる。
佐「いやだよ、A。」
その横顔を見下ろすと、彼女は何かに耐えるようにぎゅっと目をつむってる。
こんなふうに近づいてもいまだにこちらに向かない視線に切なくなって。
ぽた、と彼女の頬へとしずくが落ちた。
自分の頬に触れて初めて、俺は自分が泣いていることに気づいた。
あぁ、情けない。
でも、ようやく彼女の視線がこちらへ向いた。
その頬に触れると、びくっと震えるA。
佐「ごめ…っ」
一瞬だけ伏せられた目が、また俺を射抜く。
彼女の瞳にこんなにも惹きつけられるのはなんでだろう。
ねぇ、教えてよ…A
佐「…っ…俺から離れていかないでよ…そばに居て。A。俺、Aがいないともう頑張れない」
俺を見上げる目が、つらそうに揺らぐ。
泣き落としのようでずるいよね。
でも…どうしても離れたくないんだよ。
「…もう、やめて」
か細い声が、部屋に響く。
「もう、やめてよ…お願いだかっ」
ぐっと抱きしめる。
また、彼女が俺を遠ざけるような発言をする前に。
俺のそばに居てくれるって言葉しか聞きたくなくて…。
その時だった。
扉があく音とともに、どさっと重いものが床に落ちた音がした。
はっと振り向くと、そこにはきょもがいて。
目を見開いて震えてる。
「きょ、も」
Aの声がしたその時だった。
思い切り俺の頬を打ち抜くこぶし。
勢いよく俺はベッドの下に転がり落ちた。
続く
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作者名：Orin | 作成日時：2020年11月9日 0時
