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期待と失望と。 ページ12
抱きしめられた力が、まだ忘れられない。
あの後、ごめん、と謝ったひーくんは私の顔も見ずに帰っていった。
一人取り残された私は、どうしようもない気持ちになる。
「…嘘つき」
いまだにひーくんが私を好きだなんて信じられなくて。
だって…
あの日、彼はベッドの中で頭を抱えながら言った。
”ごめん…間違えた”
半ば無理やりだとはいえ、初めてした相手から、そういわれてしまったら傷つく。
一生忘れられない最低な初めて。
それでも、お互いに酔っていたから忘れようと思った。
酔っていたのだからしかたないって思いこんで友達でいようと思ってた。
なのに…
本当は違うだなんて今更すぎるよ。誰にも言えない内緒の話。
ただでさえいろんな人から一気に告白されて消化できていないのに。
なんで…こんな…
大きなため息をつく。
それでも、彼を嫌いになれないのはなんでなんだろう。
どこかで、期待したのかな。
さっくんを忘れられるんじゃないかって。
ひどい女。
こんなにも自分に失望する日が来るなんて思ってなかったな。
あざ笑うように鼻で笑っては私は布団へともぐりこむ。
鬱々とする。
あぁ、早く退院したい。
もういいんじゃないかな。
通院でもいいんじゃないかな。
なんて思ってはまた回診にきた先生へと聞いてみようと決意したのだった。
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作者名：Orin | 作成日時：2020年11月9日 0時
