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渡「A、開けて」
「…やだ」
泣いていたのでやや鼻声で答える。
渡「…なに、お前泣いてんの？」
「…泣いてない」
渡「じゃぁ顔見せろよ」
「やだ」
渡「とりあえずここで話してるとお前のおばさんも心配するだろ、入れてよ。」
「やだ」
渡「なんで？やだだけじゃわかんねぇんだけど」
「今は…無理」
渡「やっぱなにかあったんだろ？」
「…なにもない。なにも。」
渡「なら入れてよ」
「いや」
渡「ねぇ」
「いやだって！」
渡「何が、なんで嫌なわけ？俺、それ聞かないと帰らないよ。」
「嫌なものは…いやなのっ」
抑えたはずの涙が、ぽろぽろあふれだした。
「もう、いやなの！今は何も見たくないし何も聞きたくない！」
渡「お前がそんな態度なら俺だって容赦しねぇからな」
明らかな動揺の声が聞こえてくる。
「お願い、かえっ」
帰って、そう言いかけた瞬間、扉が開いた。
渡辺「無理。」
「っ」
目の前に現れた翔太の姿に、私はすぐさまベッドに顔をうずめ、顔を隠す。
そのまま足音がしたので、たぶん翔太は部屋に入ったのだろう。
その音のあと、扉が閉まった。
渡「なにがあった？」
私の肩にかかる手。
「ほっといて」
渡「だから、無理だって。ほっとけねぇから。」
「ねぇ、ほんとにっ」
振り返って彼を追い出そうとした瞬間、後ろから抱きしめられる。
「しょ、た！怒るよ」
渡「怒れば？怒っても、泣いてもいいよ、別に。一人で抱え込むなよ」
頬が摺り寄せられる。
あたたかいぬくもりが、私を包んで離さない。
幾分か私よりも低い身長の彼。
それでもその体は男らしくて。
「っっく…うぅ…」
渡「強がんなよ…」
抑えようとすればするほどにあふれていく涙が彼の胸を濡らしていく。
「ほんとっ…無理」
渡「うん」
「もうやだ」
渡「うん」
「助けて…」
ずっとずっと、誰かに言いたかった言葉。
かすれてか細く、力弱い声。
渡「うん、俺はどうすればいい？」
「っ…」
渡「どうしたら、お前を助けられる？」
優しい声が鼓膜を揺らす。
「わかん、な…」
渡「じゃぁ、お前は今、なんで泣いてんの？」
私を覗き込む目は、心配そうに揺れている。
「っ…す…されたの…」
詳しくは話せない、絶対に言いたくない。
それなのに、今悲しくて苦しくてやりきれないその事実だけを話す。
渡「え？」
「キス、された…」
渡「無理やり？」
ぐっと眉間にしわが寄る。
こくん、とうなずく私。
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美紀 - 移行おめでとです更新大変だと思いますが頑張ってください応援してますコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月2日 11時) (
レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Orin | 作成日時：2020年3月26日 10時
